物語の舞台がサンスポではない理由
──渡辺さんから見た吉田座長の魅力を教えてください。
渡辺 ツッコミはボケがいないと成り立たないので、座長のワントップじゃなくツートップ、スリートップでまわりを生かしながら、というのがいちばんの魅力。今回も、一の介師匠、松浦さんとのスリートップでやっていただけたら。
吉田 渡辺さんは新喜劇よりサッカーのほうが好きすぎて、たとえが全部サッカーなんですよ(笑)。
──これまでは取材する側、される側の関係でしたが、仕事のパートナーとして組んでみて、お互いの印象は変わりましたか?
渡辺 僕、サンスポで新喜劇の座長連載を担当していて、全座長に台本の書き方をステルス取材してるんですよ。
吉田 恐ろしい記者でしょう?(笑)
渡辺 プロットの段階では3行ぐらい読んでおもんないと思われたら「はい、次!」っていう感じかなと思ってたんですけど、吉田座長には全部見てもらえるというので、つい長く書いてしまいました。
吉田 いや、みんな見るでしょう、もちろん(笑)。僕からの印象は、本当に何も変わらなかったんですけど、思ったより下ネタが好きなんやなっていうのだけ。
渡辺 台本にも人間って出るんだなと思いました(笑)。この間、祇園花月で行われる新喜劇の稽古を見学に行ったんですが、女性の作家さんが書かれている台本で、なんていうか、丸みを帯びていて上品だなと。
吉田 言葉のチョイスとかね。
出典: FANY マガジン
渡辺 それに、台本に余裕があった。僕は怖くてボケをどんどん足して長くなってしまって。貪欲にガツガツしてます。サッカーで言うと……。
吉田 また! すぐサッカー出てくる!(笑)
渡辺 (元日本代表FWの)大迫(勇也)ですね。
吉田 “半端ない”台本ができたと。なるほど。
渡辺 笑いに飢えてるから貪欲……いや、ゴン中山(中山雅史)です。ゴールがほしい(笑)。
──スポーツ紙の編集部が舞台の新喜劇を想像していたので、まったく違う設定なのは驚きました。
吉田 その話もちろん出たんですけど、渡辺さんはほんまに新喜劇が好きなので、「サンスポの設定で新喜劇を書きたい」じゃないんです。ほんまの新喜劇を書きたいんですよ。サンスポさんの立場として、「記者」役がいたほうがいいですよねということで入れてはいますが、サンスポさんの新喜劇にしたいっていう発想ではなかった。そこにも新喜劇愛を感じました。
渡辺 難しかったっていうのはありますね。新喜劇を作るうえで事件を起こしたいと思っても、別にサンスポのフロアでは起きないんで(笑)。
吉田 もう襲撃ぐらいしかないですもんね(笑)。
渡辺 編集部では、電話でやり取りすることがほとんどなんですよ。それって舞台として面白くないよねって。そういう意味でやりにくかったっていうのはあります。
吉田 今回は、主役の「ゆたかな真也は一の介」の3人は借金取りの役ですが、それもふだんはあんまりない設定ですよね。ほんまに渡辺さんのコアな考えから出てきた台本やと思います。
出典: FANY マガジン
(広告の後にも続きます)
当日は新喜劇の作家陣も偵察に!?
──台本を仕上げていくなかで、苦労した点は?
渡辺 終盤になると打ち合わせのスパンが短くなってきて、細かい修正が増えるのがしんどかったですね。こないだは「ここ直してきて」って言われた野崎(塁)くんのひとことを考えるのに3日ぐらいかかったり。なのに、それをさっき削れって言われました(笑)。
──過酷な作業なんですね。
渡辺 たぶん稽古でも、つじつまが合わない部分がめちゃくちゃ出てくるので、最後の最後まで「どうしよう、どうしよう」ってなると思うんですけど……。
──稽古では、演出もするわけですよね。
渡辺 はい。
吉田 だからさっきも話に出てましたけど、祇園花月での僕の座長週の稽古を見学されたんです。下準備、バッチリですね!
渡辺 いやあ、怖いですよ。
──稽古で楽しみにしていることはありますか?
渡辺 ないです、ないです。新喜劇のストーリーは見てきましたけど、ギャグの見せ方とか立ち位置までは気をつけて見てこなかったので。そんなヤツが一の介師匠や寛平GMに「もっとこうして」とか言うなんて、もう誰が誰に言ってんのっていう。
吉田 でも一応、作・演出ですから、そこは言ってもらわないと。
渡辺 「ここ、どうしたらいいですか?」って聞かれたりするわけですよね。何て返したらいいのか。
出典: FANY マガジン
吉田 それはもう思っていることを。もちろん僕らも一緒にサポートさせてもらいますので。公演当日は、新喜劇の作家陣が見に来てるんちゃいますかね。「どんな感じでやってんねん」みたいな(笑)。
渡辺 どんな感じで見られるんですかね……「詰め込みすぎやろ」とか「大迫やろ」みたいな?
吉田 サッカーでたとえてるのは渡辺さんだけです(笑)。
──当日は、どんな気持ちで舞台を見ることになりそうですか。
渡辺 見られるとは思いますけど、一発目のボケでスベったら、もう見られないかもしれません(笑)。そこが何とかウケてくれたら見られると思います。
──最後にズバリ、いちばん見てほしいポイントをアピールしてください!
吉田 新喜劇大好きな記者の方が、大好きなシーンを詰め込んでるわけですから、見どころ満載の新喜劇になってると思います。お客さんにとっても、楽しいシーンしかないんじゃないですか。
渡辺 「どうせ遊びでしょ」とか「どうせ話題作りでしょ」っていう見られ方をすると思うんすけど、僕なりに熱は込めたんで、それを感じてもらえると思ってます。ギャグの羅列とかでは全然なくて、ちゃんとお話としてやってるつもりなんで。
吉田 「遊びじゃないよ」ってことですね。
渡辺 あとはサンスポだとか、阪神タイガースのネタももちろん出てくるので、阪神ファンの方も楽しめると思います。