パワハラやタカリ、公金不正支出疑惑などが指摘された末に県議会の不信任決議で斎藤元彦前知事(46)が失職した兵庫県で、出直し知事選が10月31日に告示された。自らの改革路線に県議会や県職員が抵抗していると主張する斎藤氏は「負けるわけにはいかない」と言いながら再出馬。独自候補擁立を断念した自民党の一部が立憲民主党とともに推す前尼崎市長の稲村和美氏(51)と、斎藤氏の激突が軸となりそうだ。
地元経済人が強力バックアップ
「今回、県議会側からの不信任決議、そしていろんな政党、政治家がですね『斎藤元彦にさせるわけにはいかない』、まあそんな強い声をいただいています。斎藤か斎藤以外か。私は絶対、それには負けるわけにはいかないんです!」
31日朝、JR神戸駅に近い公園で第一声を上げた斎藤氏は、3年前の知事選で推薦を受けた自民党と維新を含む既成政党は自らの改革の抵抗勢力だと位置づけた。
斎藤氏が力を込めるたびに公園に集まった100人超の聴衆は盛んに拍手をし、「がんばれー」と激励の声を飛ばす。平日の出勤時刻が終わった時間帯で、選挙初日にしても異例の人出だ。
「不信任決議案が可決された後、9月30日付で失職した斎藤氏は直後から“駅立ち”を始め、その様子がSNSでどんどん拡散され、駅立ちの斎藤氏に会いに来る人が増え続けました。
並行して、『改革を妨害する勢力の謀略で知事職を奪われた』と斎藤氏を擁護するSNSの書き込みも増えました。ネットの世界と斎藤氏がいる駅前では、一連の問題で批判が高まっていた9月までの空気とは真逆の、応援ムードが広がっています」(地元記者)
県政界関係者はこうした状況には“下支え”があると指摘する。
「3年前の選挙時に強力な支援をした神戸や播州地方の経済人の中には変わらず斎藤氏を応援する人がいます。駅立ちはそうした支援者らと始めたようですが、ここまで人が集まるのには驚きもあります。
ただ、目で見えるこうした光景がどこまで世論を反映しているのかはわかりません」(同関係者)
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「マスコミは嘘を言っている」
斎藤氏の前に現れて応援するのは女性が圧倒的に多い。告示の前日も昼休みに斎藤氏がJR明石駅前で短い演説をすると、その後に握手や記念撮影を求める長い列が生まれ、最後尾の人の順番が来るまでには1時間近くかかった。
その一人、40代の女性Aさんに斎藤氏を支持する理由を聞いてみた。
「支持というか、マスコミだけを信じていいのかって思って。ちゃんと話を聞いて、本人がどう思っているのか、本当のことを教えてもらいたくて来ました。私から見ると、すごくマスコミも(斎藤氏を)いじめているように見えたんですよね」(Aさん)
そこで演説を聞いて報道とどちらが正しいか判断がついたかをたずねると、「うーん、わからない。これからですね」と返って来た。
50代の女性Bさんは、斎藤氏のほうが正しいと断言した。
「最初はマスコミがガンガン放送してたけど、一次情報を見ていくうちにマスコミは嘘を言っていると思いましたね。本当に悪いことをやっているなら、あんなに頑なに辞任を拒否しないだろうし、嘘なら段々ブレていくはずなのに、それがない。言っていることは本当で、ちゃんと信念をもってやっているからだと思います」(Bさん)
家族全員が同じ考えで、共感する人は増えていると感じるという。一方で「お年寄りと話すと『道義的責任があるから辞めるべき』という人もいます。やっぱり(斎藤氏に)“悪人”のレッテルが貼られているからだと思います」とも言う。
黄色い歓声が飛んだ“握手会”のさなかには、通りかかった中年の男性が、斎藤氏の疑惑を告発した県幹部ら2人が今春以降相次いで自死したことを挙げ、「人が死んでるんやで。自責の念はないんか。モラルはないんか。こんなん応援する気がしれんわ!」と大声で叱りつけたりもした。