対抗馬は尼崎市長として実績のある稲村氏
選挙は立候補を目指す人物が多く現れ、候補者が増えれば増えるほど知名度が抜群に高い斎藤氏が有利になるとみられていたが、告示直前に「反斎藤」が急速に集約された。
「知事選にはほかに、日本維新の会の参議院議員だった清水貴之氏(50)と共産党が推す医師の大沢芳清氏(61)ら5人が立候補し、計7人が正式出馬しましたが、これでもかなり“整理”されました。
これ以外にも元加西市長の中川暢三氏(68)と元経済産業省官僚、中村稔氏(62)も立候補の意向を示していたのですが、この2人は告示直前に取りやめたのです。
中川氏は『斎藤氏だけには当選してほしくない』として、自分の支持者に稲村氏に投票するよう呼び掛けて降りました。中村氏は自民党の推薦を期待したのですが、自民党が独自候補を立てるのをやめたことで勝算はないとあきらめたようです」(地元記者)
中川氏が支援に回った稲村氏は、神戸大生時代の1995年、阪神・淡路大震災の被災地でボランティアに従事したことがきっかけで社会運動に入り、兵庫県議を2期務めた後、市民派として尼崎市長を3期12年経験している。
「稲村さんは市長時代、尼崎に4つも5つもあった暴力団の事務所を排除しました。勇気と実行力は相当なものです。財政再建でも好成績を残し、悪かった尼崎のイメージは劇的によくなりました。私は尼崎市の住民ではありませんが、尼崎がどんどん良くなっていったのは誰でも知っています」と神戸在住の60歳の女性は話す。
「今回、斎藤県政の混乱の中で、立憲民主党系の県議会の県民連合が早い時期から稲村さんに知事選への出馬を打診してきました。彼女の強みは県議や市長時代にも自民党ときちんと関係を築いていたことです。それが選挙の構図に大きく影響しました」(県議会関係者)
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稲村氏は異例の“自民・立民候補”
その言葉どおり、今回目を引くのは県議会最大会派の自民党(37議席)が独自候補を立てず、自民党の一部議員が県民連合が立てた稲村氏を支援していることだ。
「自民党も候補者を探したのですが、この短期決戦で見つけることができなかったのです。中村氏は自分を推してくれるかと期待して名乗りを挙げたのですが、かつて通産省から兵庫県に出向した時の評判が悪くて相手にされず、断念することになったのです。
自民党県議団の一部はつい最近まで兵庫県出身の国会議員らの擁立の道を探ったものの、結局告示直前にあきらめました。同時に、知事をやめさせた斎藤氏への応援を禁じる措置も取りました。
これで自民党が推せる候補は事実上稲村氏だけとなり、異例の“自民・立民候補”となったのです」(県議会筋)
10月31日の告示日、稲村氏は神戸の中心、三宮で出発式のマイクを握り、今回の問題での斎藤県政の対応を「しっかりと検証する」と言明。
「混乱に終止符を打つことはもちろん、それにとどまらず、今までよりもっとみなさんのために働ける、力を発揮できる県庁へと変えていきます」と訴えた。そのそばには自民党の衆議院議員や県議、県内の有力市長も並んだ。
3年前の知事選で維新と自民の推薦を受けた斎藤氏はネット界の声援を頼りにゲリラ戦を仕掛け、かつて市民派だった稲村氏が自民にも推される皮肉な構図の選挙戦は、11月17日に決着がつく。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班