ホークス一筋25年、チームを支えるベテラン打撃投手が明かす“打ちやすいボール”とは? 試合前のバッティング練習の本当の目的

試合前に「打ちにくい球」の練習はしない

打撃投手が投げる打ちやすい球を打って、それでバッターにとって練習になるのかと疑問に思う方もいるでしょう。

試合では相手ピッチャーがバッターのタイミングを外したり、的を絞らせないために、球速を変えたり、球質を変えたり、投げる場所、高低・内外を変えたり、投球間隔を変えたりして投げているのだから、それを打てるようにする練習が必要なのではないか。

確かにそういった実戦的な練習もあります。その場合は、打撃投手が投げた球を打つのではなく、現役の投手が投げます。真剣勝負に近い形の練習です。

「フリーバッティング」「シートバッティング」「ライブBP」(※投手の最終調整の意味合いで行う実戦形式の練習)といった練習がそれに当たります。抑えようとするピッチャー、打とうとするバッター、両方にとっての練習です。最近はCS局やネット配信でキャンプの様子が中継されるので、ご存じの方も多いでしょうが、キャンプも中盤になってくると、そういった練習が行われます。

ただ、こうした練習をしたところで一軍の試合で参考になるのかどうかは微妙なところです。いくら実戦形式といっても、同じユニフォームを着ている味方同士では、どこか真剣勝負にはならないところがあります。むしろ、一軍レベルかどうかの参考にしたり、試合出場に向けたステップとして行われる練習といっていいでしょう。

ともかく、試合前のバッティング練習の目的は感覚のチェックが中心で、打ちにくいボールを打つ練習はしません。

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試合前のバッティング練習の目的はズレの修正

ほとんどのバッターは、打撃投手にコースの指定やリクエストはしませんが、できれば同じコースに投げ続けてほしいのだろうというのは感じます。その理由は、バッターの状態を確認して調整するためには、一定のボールのほうがやりやすいからです。

先に「規格」どおりの球を投げ続けるという言い方をしたことに通じますが、重要なところなので説明を加えます。

試合前のバッティング練習は、限られた時間で自分のイメージと実際の体の動きにズレがないかをチェックして、もしあった場合はそれを調整するのが目的です。

バッターは過去の経験則から、目で見た情報をもとにバットとボールが当たる瞬間を予測し、その予測のとおりにバットを振ります。ところが、人間は機械ではないので、必ずしもそのイメージどおりに体が動くとは限りません。いつもと同じバッティングフォームのつもりでも、思ったとおりのスイング軌道になっていないということが日常的に起きます。

打撃投手が投げる球を打ちながら、そのイメージと現実のズレ、あるいは感覚と動作のズレといったものを埋めていく作業を試合前のバッティング練習で行っているのです。