千葉県立高校に勤める体育教員の女性(35)は、まさにZ世代の若手と昭和世代の上司を繋ぐ中間管理職として奮闘中だ。「まだ若いから」と上からは仕事を振られ、部下の教育係も担当。人手不足の過酷な教育現場で重責を担いつつ、プライベートの夢も追う35歳現役教員のリアルな姿に迫った。
昭和上司とZ世代若手の繋ぎ役は「正直しんどい」
「30代に入ってからは、土日の部活指導で自分の時間が〝削られる〟という感覚が強くなってきました」
そう語るのは、千葉の県立高校で体育教員として勤める35歳の女性、ゆいさん(仮名)。32歳のとき、この学校に正規職員として赴任。現在は体育主任を務め、20代の若手と40代以降の昭和世代を繋ぐ中間管理職のポジションにいる。
「ベテラン世代からは『まだ若いんだし、これからの世代が頑張ったほうがいい』と出張が伴う仕事をバンバン振られ、年齢が近いという理由で20代の若手教員への指導係も担い、足りないところをフォローする。
ベテランの昭和世代からは『俺たちの時代は担任を持って部活も土日関係なく引率して、そんなのは当たり前なんだよ!』って言ってくるし、私たちより下の世代は『そんなの実質週7労働で、俺たち休めなくないっすか?』って感じで、働き方の価値観も根本的に全く違う。正直、その世代を繋ぐのはしんどいし、どちらの価値観も理解できるので、完全に板挟みですよね」(ゆいさん、以下同)
ゆいさんの表情には疲れがにじみ、ときどき溜息交じりで、その口調からは強いストレスを抱えているように感じた。
職場では責任あるポジションを任されつつ、プライベートでは「結婚して子どもを産みたい」という思いから、昨年結婚相談所に入会。密かに婚活を始めたというが、「正直、部活の引率で土日も仕事だし、デートの予定も立てられなくて婚活どころじゃないです…」
(広告の後にも続きます)
人手不足、激務、土日返上「当たり前」の教育現場
小学生の頃から教員という仕事に憧れ、高校卒業後は体育教員を目指し、某体育大学に進学したゆいさん。その後、千葉県内の私立高校に非常勤講師として採用された。
着任直後の20代前半は、憧れの仕事に就けたことに胸が弾み、必死に業務に食らいついていた。しかし20代半ばを過ぎたあたりから「私はいつ常勤になれるのだろうか」と不満が溜まっていった。
自分より後に入った後輩は、母校出身という理由で早々に常勤になった。「20代で若いし独身だから」と土日返上で運動部の指導を任されながらも、正式な文書に名前が載るのはいつも正規の顧問教諭。部活指導に力を入れても、進学重視の学校だったため、「部活は勉強の邪魔にならないようにしてくれ」と他教員に言われたこともあった。
この学校にいても、自分が正当に評価される日はこないように感じた。ゆいさんはその間、公立高校の教員採用試験に何度も挑み、9年目にして合格。32歳で現在勤める千葉県立高校に正規で採用された。ただそこでも新たな試練にぶつかった。
「32歳って教員の世界ではもう中堅なんですよ。私は正規で担任持つのも初めてだったけど、周りを見たら同世代は主任を務めていたり、学年会議でバンバン意見をだして仕切っていたりして、『私だけ遅れている』という焦りや劣等感はすごく感じていました」
とはいえ、人手不足などの関係もあり、赴任2年目から急遽、体育主任を任されることになり、「それはそれで大変だった」とゆいさんは振り返る。
「業務量も多いし、容量もつかめず上手く回せない。だけど人手不足だから業務を引き受けざるを得ずに、その都度キャパオーバーになってしまって。自分は全然ダメじゃんって毎日凹んでばかりでした」