50代になって「全身刺青男」に…総費用は「高級外車1台分」、困ったことは「スマホの顔認証が登録できないこと」

携帯ショップ店員に言われた「iPhone16を待て」 

──じゃあ、意外と困ることはないんですね。

温泉だって事前に相談すれば受け入れてくれる宿がある。さすがに俺が行くとびっくりされるけど、「刺青バカなだけなんです」って言えば、相手もわかってくれるよ。今の刺青だと、かつては難しかったMRI検査もできるしね。

あ、でもiPhoneの顔認証が登録できない! 携帯ショップで店員さんに設定してもらおうとしたけど、顔を回してiPhoneに認識させる工程を何度やり直してもうまくいかなくて。結局、係の人がAppleに問い合わせしてくれたけど、やっぱり無理だって。「iPhone16は性能がよくなるので認証できるかもしれません。それをお待ちになっては?」なんて言われましたね。

声をかけてくれる人も多いし、むしろいいことも多いんだよ。総身彫り(首から下、手首・足首より上の範囲)以上の刺青を入れている人とはアイコンタクトでわかり合える。同じ痛みを戦い抜いた戦友だから(笑)。

映画撮影にも呼んでいただいたりして、刺青きっかけで人生の可能性が広がっているように思いますね。

──刺青を後悔したことはないですか?

全然ないね!

──これから刺青を入れたい人になにか伝えるなら?

やめた方がいいとは言わないよ。ただ、痛いか痛くないかで言えば、痛いよ(笑)! でも、やる以上はスタジオにも遅刻せず真剣にやり遂げて極めること! 「粋な兄ちゃん、筋彫り彫って、金がないのか痛いのか(編註:刺青のアウトライン(筋掘り)だけ彫って、完成に至っていないのは、お金がないせいなのか、それとも痛みに耐えられないせいなのか)」なんてだらしないことにはならないようにね。

〈前編〉「肌色が残るのが納得いかないんですよ」耳の中から局部まで…全身に刺青を入れ続ける、元極道の半生

取材・文/宿無の翁 写真/わけとく 
協力/H&Ms 原宿スタジオ(https://www.instagram.com/masashi_tattoo/)