ありふれた物理法則の「裏の顔」が明らかになる
この研究によって、私たち人類が唯一無二と信じていたいくつかの物理法則が、複数の表現方法の1つでしかない可能性が示されました。
研究者たちは、もし知的なエイリアンがいたら、彼らは私たちと異なる概念に基づく変数を用いて、異なる物理法則の表現をしている可能性があると述べています。
また今回の研究に用いられた手法は、単純な物体の運動だけでなく他のあらゆる種類のデータソースにも適用できるとのこと。
そのため新たなAIは、未知の物理現象の解明にも役立つ可能性があります。
AIが人間に認識できない変数を見つけて新たな物理法則を発見するようになれば、ノーベル物理学賞はAIに総なめされるかも? / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
これまで開発された「物理現象を自力で発見するAI」の多くは、変数そのものが事前に設定されているときのみ、観測結果から物理法則を抽出できるタイプであるため、変数そのものが不明な未知の物理現象に対しては十分に働かない可能性がありました。
しかし観察結果から変数そのものを自力で検出できるAIがあれば、人間の科学者の理解を助ける有用なツールとなると考えられます。
研究者たちはこの結果を受けて、AIにより認識された変数と既知の物理量で表現するための別のAIを開発していくとのこと。
もしかしたら100年後の未来には、ノーベル賞がAI搭載のロボットに総なめされているかもしれませんね。
※この記事は2022年7月に掲載したものを再編集してお送りしています。
参考文献
Columbia Engineering Roboticists Discover Alternative Physics
https://www.engineering.columbia.edu/news/lipson-chen-ai-alternative-physics
元論文
Automated discovery of fundamental variables hidden in experimental data
https://doi.org/10.1038/s43588-022-00281-6
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。
大学で研究生活を送ること10年と少し。
小説家としての活動履歴あり。
専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。
日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。
夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。