排尿障害を相談する流れで検査をして、早期で治療にかかればまだセーフ。一方で、放置したままにしていると、重篤な症状を引き起こしてしまう。

「血尿が出ます。悪性腫瘍が尿道にまで進行することで、がん細胞から出血してしまうのです。この段階ですと、他の箇所にも転移している可能性が高い。骨への転移によって腰痛や歩行障害が現れるケースもあります。ちなみに、前立腺がんそのものは勃起力にはほとんど影響がありません。さらに言えば、睾丸にもがんが転移するまでは症状が現れません」

 日本人患者数は1975年に2000人程度だったのが、2015年には約8万人に増加。男性の前立腺がん患者数は、全がん部位の中で1位となっている。

「高齢化と血液検査の精度が上がったことも要因として考えられますが、食生活の欧米化が一番の原因だと言われています。米国では男性のがんの中で、罹患者数と死亡者数は前立腺がんが1位ですからね。肉、卵、乳製品などの動物性たんぱく質を多く摂取する食習慣があると、発症リスクは高くなります」

 もちろん、緑黄色野菜を食べないと前立腺がん発症のリスクはさらに上がる。

「肉ばかり食べて野菜を食べないような偏食を続けてしまうと体に毒なのは大人なら誰もが知っているはずなんですけど、意識せずに1日350グラムの野菜摂取目標をクリアできている人はマレだと思います。同様にメタボリックシンドロームなどの生活習慣病につながるような運動不足も発症リスクを高めてしまいます。週に最低3時間以上の運動を推奨しています」

 もっとも、体の形成に必要な栄養素でも摂りすぎには注意が必要なケースがある。

「カルシウムの過剰摂取も注意が必要です。成人男性だと700~800ミリグラムが1日の推奨量ですが、これが2000ミリグラムを超えると発症リスクを高めてしまいます。例えば、牛乳のカルシウム量が100グラムあたり110ミリグラムと言われます。なので、1日に2㍑も飲むのはNG。骨粗鬆症を予防するためにサプリメントで摂取する方も少なくないと思いますが、改めて1日のカルシウム量を計算した方がいいでしょう」

 検査をして前立腺がんが発覚しても、治療の選択肢は複数ある。

「単に前立腺を切除する外科手術だけではありません。最近は、ホルモン療法や放射線治療といった切らない治療法も増えています。術後の体の負担が少なくて予後も良好なケースが多い。もしも、全摘出となると勃起障害の後遺症が残ることもあります。どの術式が自分に適しているのか、担当医と相談して決めましょう」

 がんサバイバーとして先の人生を見据えた選択が必要なのである。

【「前立腺がん」チェックシート⑩】

セルフチェックで5点以上は近くの医療機関へGO!

①週に3時間以上の運動をする習慣がない 1点
②最近、1日に350グラム以上の野菜を食べた記憶がない 1点
③主菜は肉料理が多い気がする 1点
④牛乳とカルシウムのサプリメントを常飲している 1点
⑤健康診断でメタボ判定が出た 2点
⑥慢性的な腰痛に悩まされている 2点
⑦30分に1回はおしっこに行きたくなる 2点
⑧毎晩のようにおしっこで目が覚める(おねしょをしてしまう)2点
⑨おしっこの勢いが悪くなった 5点
⑩残尿感に悩まされている 5点

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