最近、小水のキレが悪い気がする‥‥。誰にでも平等に訪れる「老い」。しかし、抗えないものだと決めつけて放置してしまうと、大病のサインを見逃すことになりかねない。手遅れになる前に気づきを得るべし!

 初期症状がほとんどないために「沈黙の病」と呼ばれる疾患は数多ある。その中でも、早期発見・早期治療が重要なのが「前立腺がん」である。神奈川県綾瀬市にある「きくち総合診療クリニック」の菊池大和院長が解説する。

「20年に国立がん研究センターが発表した統計資料によると、5年生存率は99.1%、細かくステージごとに見てもⅠ~Ⅲまでは100%と、早期で適切な治療を受けられれば完治できる疾患です。日本人男性の死亡原因1位の肺がんがステージⅠで89.4%、Ⅱで54.7%、Ⅲで26.8%という統計データと比べれば、比較的完治しやすい疾患であることがよりわかると思います」

 そもそも前立腺とは、男性にのみあるクルミ大の生殖器の1つだ。膀胱の出口に、尿道の周りを取り囲むように位置して、主に精液を作る役割を担っている。

「初期のうちは、腫瘍ができても自覚症状がありません。それが少しずつ大きくなるにつれ、尿道を圧迫するようになってしまいます。これまでジャーッと排泄されてきた尿がチョロチョロとしか出なくなる。水を撒いていたホースの途中を踏んで、流れが悪くなるようなイメージです。頻尿や残尿感の症状も現れます。おしっこの回数が増えたという自覚がある方は病院に行くべきです」

 似たような症状として「前立腺肥大症」という疾患もあるが、似て非なるもののようで、

「前立腺が最大で鶏卵ほどの大きさになります。肥大化していく中で固くなった前立腺が尿道を圧迫して、前立腺がんと同じような症状が現れます。ただし死に至らしめることはほとんどなく、QOL(生活の質)が下がる程度です。あくまで良性の腫瘍で、外に広がったり転移したりすることはありません。原因ははっきりしていませんが、男性ホルモンの減少が影響していると言われています」

 両疾患を区別するためにも医療機関での検査がマストになる。

「血液検査で前立腺特異抗原(PSA)というたんぱく質の数値を測定します。かなり精度の高いスクリーニングで、数値が正常であれば、がんではないと判定できます。50歳以上の男性は最低でも年に1回の頻度で検査を受けることを推奨しています」

 おしっこの違和感を感じたら、今すぐに検査が必要だ。

【「前立腺がん」チェックシート⑩】

セルフチェックで5点以上は近くの医療機関へGO!

①週に3時間以上の運動をする習慣がない 1点
②最近、1日に350グラム以上の野菜を食べた記憶がない 1点
③主菜は肉料理が多い気がする 1点
④牛乳とカルシウムのサプリメントを常飲している 1点
⑤健康診断でメタボ判定が出た 2点
⑥慢性的な腰痛に悩まされている 2点
⑦30分に1回はおしっこに行きたくなる 2点
⑧毎晩のようにおしっこで目が覚める(おねしょをしてしまう)2点
⑨おしっこの勢いが悪くなった 5点
⑩残尿感に悩まされている 5点

(つづく)

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