今、世界中でSNSの弊害に注目が集まり、法規制が広がりを見せている。アメリカ、イギリス、カナダなどでは未成年によるSNSの利用が制限され、ブラジルでは今年8月末に「X」のサービスそのものが一時停止された。誹謗中傷など悪い面ばかりが目立っているSNSだが、Z世代はどう向き合っているのか。原宿や新宿など、若者が集まる街を中心に街頭で調査を行なった。
ブラジルでは一時期Xが利用禁止に!? 悪影響が問題に
今年8月末、ブラジルで最高裁判所の判断により、国内で「X」のサービスを停止する命令が下された。これはフェイクニュースやヘイトスピーチへの対策を目的としており、ツールを使ってアクセスするユーザーには、1日あたり5万レアル(約130万円)の罰金が科されるという厳しい措置が講じられた。
その後、フェイク情報を拡散するアカウントのブロックや、X社のCEOイーロン・マスク氏が罰金を支払ったことを受け、10月9日から利用が再開。禁止期間は、わずか1カ月ほどで終了した。
国内では、今年6月にお笑いコンビ・EXITの兼近大樹がXのアカウントを削除したことが話題になった。その理由について、彼はレギュラー出演する『ABEMA Prime』(ABEMA)で「誹謗中傷をしているようなヤバイ人を見て、自分がその仲間だと思われたくなかったし、そこに居たくないと思った。それで『やめよう』と決めた」と告白。
また、9月放送の冠番組『EXITV』(フジテレビ系)でも、X上で繰り広げられる激しい論争について触れ、「見たくなくて、それでやめました」と明かしている。
実際のところ、日本でもSNS上では日々多くの不毛な論争が繰り広げられており、ユーザーにとって居心地のいい場所とは言い難い状況になっている。一方で、SNSは災害情報などを得るための社会的インフラとしても機能しており、完全にやめるわけにもいかない、という側面もあるだろう。
こうしたジレンマに対して、“SNSネイティブ”ともいえるZ世代はどのように向き合っているのか。街頭調査を行い、その実態を探ってみた。
まず訪れたのは、多くの若者たちが行き交う原宿。さっそくSNSの利用について聞いてみると、次のような意見が上がってきた。
「インスタ(Instagram)やXなど、いろいろなSNSを使っています。特によく使うのはインスタで、ストーリーズをメインに友人同士で閲覧し合っています。トラブルもないし、見ていて心が傷つくようなことも特にありません」(20歳男性・大学2年生)
「私の周囲には、SNSでメンタルを病んでしまった人もおらず、みんな平和に楽しく使っています。ただ、もしSNSをやっていなくても、そんなに困ることはないんじゃないかなと思いますね」(23歳女性・飲食業)
原宿では、SNSに対してポジティブな姿勢を見せる若者が多数を占めた。少し違った意見を求め、筆者は学生街としても有名な御茶ノ水へと場所を移した。
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「親の影響でSNSが禁止」という学生も
御茶ノ水は有名大学や予備校が密集しているエリアであり、平日土日を問わず、多くの学生たちで賑わっている。ここでは、原宿とは違った、次のような意見が聞こえてきた。
「SNSに対して親があまり肯定的ではなく、僕自身も学校のリテラシー教育でネットは怖いと思っていたので、高校時代はSNSをやっていませんでした。でも、大学に入ってからは、新入生の交流とかで『インスタ交換しない?』と言われる機会が増えてきて……。
最初は『ごめん、やってないんだ』って答えていたんですけど、そのたびに変な空気になってしまって。そんなことが3回くらい続いたので、『これはアカウントを作ったほうがいいな』と思って始めました」(18歳男性・大学1年生)
「僕はSNSをやってないです。これまでアカウントを作ったこともありません。理由は、単純に楽しそうだと思わないので。それに、インスタで友人と繋がらなくても、LINEで友人とやりとりできますし。SNSを使っていないことで、不利益を感じた経験もないです。
でも、友人に1人だけ、LINEもSNSも使っていない人がいるんです。親が厳しいらしくて、遊びに誘うときは電話しなきゃいけないんです。だから、周囲からは『誘うのがちょっと面倒』って感じで、少し距離が生まれているようですね」(18歳男性・受験生)
SNSは若者にとって必須のツールだが、家庭の方針によって利用できないケースもあるようだ。
筆者はさらに場所を変え、多くの人が集まる新宿へと足を伸ばした。すると、そこでは「SNSを見るのに疲れて、やめてしまった」という若者に出会った。