チョコレートの摂取が心や体へどのように影響するかは、これまで多くの研究が行われています。/ Credit : Canva

多くの人がチョコレートを愛してやまない理由は何でしょうか。

甘い香り、口溶けの良さ、そして食べた瞬間の幸福感。

これらは単なる味覚の問題ではなく、実は心理的な要因が深く関わっていることが分かっています。

チョコレートが私たちの心に与える影響は、単なる嗜好品を超えたものです。

様々な研究によると、チョコレートには不安やストレスを軽減し、幸福感を高める力があることが明らかになっています。

特に、ゆっくりとチョコレートを味わうことで、ポジティブな感情が増し、ネガティブな感情が減るという結果が報告されています。

しかし、興味深いのはその異なる二相性です。

つまり、チョコレートは状況によって異なる効果を発揮することがあるのです。

例えば、集中が必要なときに少量を食べると作業効率が上がり、リラックスしたいときには心を落ち着ける効果を持つことが確認されています。

チョコレートの効果は、単なる栄養成分やカカオの含有量にとどまらず、その香りや味が私たちの脳に働きかけ、気分を左右する重要な要素となっているのです。

明治製菓と駒沢大学は、共同研究として、これらのチョコレートの効果について二相性作用の観点から実験、評価を行っています。

本研究は、2022年8月6日付の『日本感性工学会の論文誌』として公開されています

目次

チョコレートの心理的作用チョコレートを食べると作業効率が上がる?チョコレートが脳に働く効果

チョコレートの心理的作用

これまでに、チョコレートを食べることが体や心にどのような影響を与えるか、多くの研究が行われています。

Bentonらの研究では、大学生330人にアンケートを行い、チョコレートに対する感じ方として3つの要素(強い欲求、罪悪感、栄養補給)があることを発見しました。

特に、チョコレートを食べたいという強い気持ちの背景には、不安やストレスを和らげ、気分を良くしたいという期待があると考えられました。

チョコレートには実際に、気分が落ち込んだり不安を感じたりしたときに、それを軽くする効果があることが分かっています。

研究によれば、チョコレートを食べると、うつ症状や不安が和らぎ、幸福感が増し、嫌な気持ちが減ることが確認されています。

また、リンゴよりもチョコレートの方が気分改善の効果が強く、チョコレートをゆっくり味わって食べると、ポジティブな感情が増えることも分かりました。

この効果は、クラッカーでは見られませんでした。

但し、栄養的には同じでも、美味しくないチョコレートでは嫌な気持ちを和らげる効果がないことも示されています。

さらに、チョコレートのどの成分が「食べたい」という強い欲求に関わるのかを調べるため、週に1回以上チョコレートを食べたくなる大学生34名を対象にした研究もあります。

結果として、カプセルに入れたココアパウダーやホワイトチョコレートでは、食べた後の満足感は弱いことが分かりました。

特に、ホワイトチョコレートにココアパウダーを足しても、通常のチョコレートを食べたときの満足感には及ばなかったのです。

この結果から、チョコレートを食べたいと感じるのは、栄養や成分だけでなく、他の心理的な要因が関わっていることが示されています。

チョコレートには、私たちがリラックスしたいとき、あるいはストレスから解放されたいときに強い欲求を引き起こす力があります。

しかし、その作用は単純ではなく、「二相性作用」と呼ばれる、状況に応じて異なる影響を与える特性があるのです。

まず、二相性作用について説明しましょう。

これは、同じ物質や行為が異なる状況で全く違った効果をもたらす現象です。

たとえば、カフェインが含まれるコーヒーは、朝の目覚めに飲むと覚醒効果があり、集中力を高めます。

しかし、夜遅くに飲むとリラックスして心を落ち着ける効果を感じることもあるのです。

このような作用は、チョコレートでも観察されます。

たとえば、仕事中や勉強中に少量のチョコレートを食べることで集中力が高まる一方、リラックスしたいときには同じチョコレートが心を落ち着かせ、ストレスを軽減する効果を持つことがあります。

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チョコレートを食べると作業効率が上がる?

研究によると、チョコレートには不安やストレスを軽減する効果があることが分かっています。

ある調査では、チョコレートを食べることでポジティブな感情が増加し、逆にネガティブな感情が減少するという結果が出ました。

さらに、チョコレートをゆっくり味わって食べると、同じようにポジティブな気分が増すということも報告されています。

この効果は、チョコレートの栄養やカカオ成分だけでは説明できません。

実際に、栄養的に同じでも味の悪いチョコレートでは、その心理的な効果は現れないことが示されています。

つまり、チョコレートの味や香りといった感覚的な要素が、私たちの気分に与える影響は非常に大きいのです。

では、チョコレートが作業や勉強に与える影響はどうでしょうか。

ある研究では、チョコレートの香り成分が集中力や反応時間に影響を与えることが確認されています。

特に、チョコレートの香りが強いと、その成分が脳の活動に作用し、作業効率を向上させる可能性があることが示されています。

しかし、チョコレートに含まれるカフェインやテオブロミンといった成分が直接的に作業効率を高めるわけではありません。

カフェインの量は少なく、その覚醒作用が表れるにはかなりの時間が必要です。

一方、ショ糖が血糖値を上昇させることにより、短期的にエネルギー供給の効果をもたらすことが考えられますが、その影響も限定的です。

このことから、チョコレートの作業効率の向上効果は、成分そのものよりも香りや味が引き起こす心理的な効果が大きいのではないかと考えられています。

チョコレートを食べるときの心の状態によって、その効果は異なります。

仕事中や勉強中に食べるチョコレートは、元気が出る「チア・アップ効果」をもたらし、逆にリラックスしたいときに食べると、心を落ち着ける「リラックス効果」が現れるのです。

本研究では、栄養効果が必ずしも期待されない少量のチョコレート(約4.6グラム)を食べることで、どのような影響があるのかを確認する実験を行いました。

チョコレートを食べることで気分がどう変わるのかを調べるだけでなく、実際の行動や体の反応も観察し、その効果を科学的に実証しようと考えました。

特に、チョコレートを食べた後のチア・アップ効果とリラックス効果が、状況によって変わるのかを、生理的な反応や心理的な指標、行動データを使って調べました。

その結果、集中力が必要な作業中にチョコレートを食べると、ポジティブな感情が増し、ネガティブな感情が減少したと報告されています。

これは、チョコレートを食べることでストレスが軽減し、元気が湧いてくる効果が確認されたものです。

一方、作業が終わった後にチョコレートを食べると、心がリラックスし、作業中に感じていた緊張感やストレスが和らぐことが分かりました。

このように、チョコレートには二相性作用があり、その効果は食べるタイミングや状況によって変化しています。


チョコレートの香りが強いと、その成分が脳の活動に作用し、作業効率を向上させることが期待できます。/ Credit : Canva