「人間とはなにか」を投げかけ続けた巨匠
楳図の描く恐怖漫画はただの怪物や幽霊の怖さとは少し違う。
その恐怖の本質は、人間の内側にある理解しがたい衝動や異質さ、それがふとした瞬間に表に現れてしまうということだろう。
だからこそ、『まことちゃん』のようなギャグ漫画の中にも、その暗いエネルギーが流れ込み、僕たちに「ただの笑いでは済まされないなにか」を感じさせた。
その感覚は、僕にとって楳図かずお作品全体に通じる独特の恐怖だったように思う。
もっと言えば、楳図は、恐怖を通して、奇妙でありながらもどこかリアルな人間像を描くことで、僕たちに「人間とはなにか」という問いを投げかけ続けていたのかもしれない。
その問いかけはギャグ漫画であろうとホラー漫画であろうと変わらず、一貫して彼の作品に流れていたのだと思う。
楳図かずおという存在がこの世に遺したのは、僕たちが心の奥で感じる、でも普段は目をそらしてしまうような混沌そのものだったのだ。
心よりご冥福をお祈りしたい。
そして、亡くなったはずの楳図かずおを吉祥寺で見た! という噂話が早く出てこないかなと期待している自分がいる。
文/佐藤誠二朗