アメリカは保守化、右傾化が最も進んでいる
彼女たちがZ世代という言葉を強調するので、団体としては、具体的にどの年齢層をターゲットにしているのかを聞いたら、基本的には1997年生まれ以降とのことだった。団体は、特定の政党を支持しない、いわゆるノンパーティザンであるが、自分たちが求める政策の実現可能性などを考えて選挙で推薦する候補者を決める際には、結果として、民主党の候補者が多いという。
アメリカの若者たちの中には、彼女たちが熱く語るようにプログレッシブであることを求める若者も多いが、保守派の若者たちの活動も目立っている。若い世代での分断について、2人はどう認識しているのだろうか。ジャワーさんは、こう切り出した。
「アメリカは、他の民主主義の先進国と比べて、保守化、右傾化が最も進んでいると思います。アメリカでは、よりリベラルとされている政治家であっても、アメリカ以外の国に行けば、保守というカテゴリーの中に含まれるかもしれません」
かつての保守は、中道寄りから、今でいうところの極右までウイングが広かったものの、現在の共和党を見てみると、中道寄りではすぐに大統領候補になりえる政治家は存在せず、まるでトランプ前大統領を支持する極右のための政党のようになっていて、かつてよりも重心が右に動いたという認識だ。
ジャワーさんは、支部の活動を行う中で遭遇したある出来事を話してくれた。カリフォルニア州の州都サクラメントで、仲間と一緒に銃規制強化の活動をしていたところ、右派の人たちと偶然出くわしたという。
彼らは、自分たちと言葉を交わそうとはせず、一方的に活動を妨害してくるような感じだったそうだ。プログレッシブであることは、別に保守を否定することではないし、両者の対話は可能だと常々考えているジャワーさんにとっては、ショックな出来事だった。
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彼らは常に投票に行く
保守派の拡大に強い懸念を持っていることは理解できたが、それに対抗するための戦略はどう考えているのだろうか。ジャワーさんからの回答は明快なものだった。
「彼らは、小さなポケットの中のような狭いところで生きています。しかし、全米で大きな影響力を持っています。なぜなら、彼らは常に投票に行くからです。そして、トランプ氏のような人を支えているのです。
彼らがアメリカという国を代表しているわけではありません。単に他のグループの人たちよりも投票に行くというだけです。ですから、私たちのゴールは、極右の運動を支持しない人々に動いてもらうことなのです。ある意味、昔ながらの手法です」
また、トランさんは、「ターニング・ポイント・USA」のような保守派団体の活動が目立つのは、メディアには視聴者や読者が興味を持ちそうなことから取り上げる傾向があることも理由の1つであり、それでは彼らの思うつぼだと考えている。そして、トランさんも、筆者と同様に、巨額の資金がどこに、どう流れているのかに関心を持っていた。
「結局のところ、アメリカでは悲しいことに、選挙資金の透明性がないのです。いわば政治屋のような人たちが、特にロビー団体とどういうことで合意しているのかがまったく見えないのです。連邦レベルでも、それ以外のレベルでも、腐敗をなくし、透明性を確保することが、違った考えを持つグループ同士の歩み寄りを促すことにつながるかもしれないと考えています」
トランさんは、2024年の大統領選挙でトランプ氏が返り咲く可能性があると考えている。それは、「トランプ氏は、白人の不満を武器にする能力がとても高い」と見ているからだ。
一方で、楽観できる材料もあると考えている。それは2022年の中間選挙の結果だ。当初は共和党の圧勝、いわゆる「レッド・ウェーブ」が予測されていたが、共和党の勝利はそれほどではなく、トランさんは、Z世代が投票に行って、波を食い止めたからだと受け止めている。
予定していた1時間はあっという間に過ぎた。支局があるビルの駐車場には、トランさんの父親が、カリフォルニア州でも人気のテスラの電気自動車で2人を迎えに来ていた。
年齢は筆者とあまり変わらないようだ。彼女たちの活動は、2人の情熱が原動力なのはもちろんだろうが、きっと親も懸命に応援していて、それも支えになっているのだろう。車が駐車場から出ていく様子を見ながら、そんなことを考えた。