「お祭りだから、とても楽しい」
――続いて、関西演劇祭の魅力についても教えてください。まず、関西演劇祭の特徴として、公演時間が45分と短い点がありますが、その点についてはいかがですか?
野上 45分と短いから、いろいろな劇団の舞台をたくさん見られるんですよね。私のイメージはデパ地下のお惣菜コーナー。いろんな味のものが並んでいて、ちょっとずつ楽しめる、あのテンションが上がる感じとすごく似ています。劇団側はその短い45分に気合を入れて作品を作り込んでいるので、それに毎回ウキウキワクワクします。
出典: FANY マガジン
三島 短いのでとても見やすいと思います。ふだんの舞台公演のような「よし、見に行くぞ」みたいな気負いはなく、いろんな劇団を楽しめるのがいい。お祭りだから、とても楽しいです。
板尾 45分くらいだと、集中力が切れずにちょうどいい長さですし……。こんなこと言うとあれですけど、45分で終わりますからね(笑)。変な言い方ですけど、リスクが少ないです。
笠浦 いまはタイパを重視する人が多いので、私もふだん芝居を見る際、自分が好きそうな作品を選んで見に行くことが多いです。でも関西演劇祭では、いつもなら選ばないものに触れる機会が出てくる。それも大切なことですよね。期待せずに見て「こういうのも面白いんだ」と気づくこともあれば、逆に理解できずに「自分となにが合わないのか」を考えるきっかけになるので、そういう予想外の体験ができるのが楽しみです。
伊原 本当に、めちゃくちゃ贅沢な機会ですよね。知らない劇団、劇場に行くのは不安要素がありますけど、今回はここにいればいろんな作品を見られるので。芝居好きな人にはもちろん、芝居にあまり触れてこなかった方にも、入り口になる素晴らしい空間だと思います。
出典: FANY マガジン
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ティーチインは演劇のあとの最高の“飲み会”!?
――もう1つ関西演劇祭の特徴として、終演後に審査員や観客の質問に俳優や演出家がその場で答える「公開ティーチイン」があると思います。このティーチインについて、皆さんどのようにお考えですか?
伊原 演劇はさっき言ったとおり「見方が自由」で、どこにフォーカスして見るかは人それぞれだと思うので、ホクホクの状態で全員での大感想会みたいな場があるのは本当に楽しみです。私はここにいる皆さんほど何かを伝えられるわけではないですけど、素直に自由な感想を共有したいと思っています。
三島 知り合いの人と演劇を見に行ったら、その後の飲み会で演劇の話をするのが、極意というか楽しみ方の1つです。でも1人で見に行くと、誰かと喋りたいのにモンモンとしながら帰らなきゃいけないですよね。ティーチインは、まさに演劇のあとの最高の飲み会までセッティングがされている感覚です(笑)。
野上 確かに(笑)。私は関西演劇祭で初めてティーチインを経験しましたが、終わりたてで湯気が出ているような状態の人たちと向き合って、「このシーンはどういう意味ですか」「これは何をモチーフにしていますか」などとやり取りするのが、本当に活きた対話で面白かったです。会場全体が愛にあふれていますよね。
板尾 あと、たまにその劇団をいつも見に来ている常連の人が、怒って文句を言っていることもありますよね。「力が入っていて、いつもよりも伝わってこなかった」とか、株主ぐらいご立腹な意見を聞けるときもあります(笑)。
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野上 ありますね。「もっとやれるはずだ!」といった応援のようなご意見。見守ってきたんでしょうね。
伊原 愛ですね(笑)。
野上 それも愛です(笑)。
板尾 それをみんなで見るのも面白いんですよ。
笠浦 批判的な意見を正直に言ってもらえるのは、劇団の皆さんにとっても非常に貴重なことだと思います。ふだん、自分たちの小屋でやるお芝居と違って、今回は吹きさらしのなかでやるようなものですよね。
板尾 そうですね(笑)。
三島 アウェイのなかでやらなきゃいけない。
笠浦 だからこそ、臆せずにガツンとやってほしいですね。小さくまとまらず、「挑戦しているな」「イキっているな」と感じられるような、自分たちが本気でやりたいことを見せてほしいです。
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――各劇団は演劇祭中に1組あたり3回の公演を行いますが、ティーチインを通して劇団が変わっていくこともあるんですよね。
板尾 若い俳優に多いですが、ぐんと上手くなる人もいます。ティーチインで出た意見を反映する人もいますし、自分で考えて変化をつける人もいます。こちらも「あれ、すごくよくなっているな」と感じられるので、同じお芝居を短期間に何度も見る楽しみがあります。あと、逆に間違ったところをずっと間違えているやつもいますね。「いつできんねん、お前」って(笑)。
一同 (笑)
笠浦 トラウマになっちゃうんですね(笑)。
板尾 こっちもわかってるから、「来た。来るぞ……。またできへんのかい!」って。人間って面白いですよね。そんな劇団が心に残っています(笑)。