健康に良い食べ物は野菜、魚、そして〇〇! ただし、NGな食べ方も。エビデンスに基づいた“積極的に食べたいもの”はコレだ

「××を食べると健康に良い」というニュースが世の中にはあふれている。しかし、実は「科学的に本当に健康に良い」といえる食べ物はそこまで多くない。

UCLA准教授で医師の津川友介氏の著書『正しい医学知識がよくわかる あなたを病気から守る10のルール』より一部抜粋・再構成し、エビデンスに基づいた「本当に健康に良い食べ物」と、陥りがちな食べ方のワナについて解説する。

魚を食べている人ほど死亡リスクが低い

ずばり、健康に良い食べ物の筆頭は魚である。

魚を食べている人ほど死亡率が低い。2016年に、欧州の権威ある栄養学の雑誌に12の研究(合計67万人)のデータを統合した研究の結果が掲載された。それによると、魚の摂取量が多い人ほど死亡するリスクが低いことが明らかとなった。

では魚はどれくらい食べればよいのだろうか。

1日60gの魚を食べていた人は、魚を全く食べない人と比べて12%死亡率が低かった。しかし、食べれば食べるほど健康上のメリットがあるわけではなく、図からも分かるように、1日60g以上の魚を食べてもプラスアルファの効果はなさそうである。

ちなみにこの複数の研究を統合した論文に含まれたものとして、日本人を対象とした研究も2つあり、両方とも魚の摂取量が多いほど死亡率が低いという結果が得られた。

また、魚を食べると、脳卒中や心筋梗塞など動脈硬化のために起こる病気を予防する可能性もある。複数の研究を統合した研究によると、1日あたり85〜170gの魚(特に脂の多い魚)を摂取すると、ほとんど魚を食べない人と比べて心筋梗塞によって死亡するリスクが36%も低いことが明らかになった。

さらに魚を食べるとがんのリスクも下がる可能性が示唆されている。21の研究を統合した研究によると、オメガ‐3脂肪酸換算で1日0.1gの魚を食べると、乳がんのリスクが5%下がる可能性があると報告されている。

こちらに関しても食べれば食べるだけリスクが下がるわけではなく、ゼロから少しだけ(オメガ‐3脂肪酸で0.1g/日)食べた時に一番リスクが下がるので、少量の魚をコツコツと食べるのが良いだろう。

この他にも、魚の摂取は、大腸がんや肺がんのリスクも下げる可能性があることが報告されている。

一方で、魚を食べても胃がんのリスクは下がらないと考えられている。また、前立腺がんに関しては、がんになるリスクを下げることはないものの、がんになった時にがんに関連して死亡するリスクを下げる可能性があることが分かっている。

(広告の後にも続きます)

野菜は身体に良いが、野菜ジュースはNG

野菜や果物が健康に良い食べ物であることは、多くの人がすでに知っている常識である。しかし、野菜や果物なら何でもいいというわけではない。

未加工の野菜や果物が健康に良いという研究結果はたくさんあるものの、野菜や果物をジュースやピューレなどに加工したものでは健康上のメリットがなくなってしまう可能性が示唆されている。

「未加工の野菜や果物」とは、生である必要はなく、茹で野菜でも野菜のスープでも良い。一回冷凍した野菜や果物を解凍してもそれほど大きな変化はないだろう。しかし、加工品になると話は変わってくる。

ここで言う「未加工の野菜や果物」とはスーパーや八百屋で売っている本物の野菜や果物のことであり、フルーツジュースやピューレなどの加工されたものは含まない。これらは加工の過程で、不溶性の食物繊維(水溶性の食物繊維は加工品にも含まれる)などの重要な栄養素が失われてしまうため、健康上のメリットが失われていると考えられている。

そう考えると、大部分の不溶性の食物繊維が失われていると思われるコールドプレスジュースよりも、未加工の野菜や果物をそのまま破砕するスムージーの方が健康に良いと思われる(この2つを実際に比較した研究はないため、これは筆者個人の見解である)。

では、野菜や果物にはどのような健康効果があるのだろうか。16の研究をまとめた研究によると、1日の果物の摂取量が1単位(バナナなら1/2本、りんごなら小玉1つ)増えるごとに、全死亡率は6%減り、野菜の摂取量が1単位(小皿1杯)増えると全死亡率は5%減ると報告されている。

野菜や果物は食べれば食べるほど死亡率は減るものの、1日の摂取量が5単位(380~400g)を超えると、それ以上摂取量が増えても死亡率は変わらなくなると考えられている。つまり、1日400g位食べれば健康上のメリットは十分であると言って良いだろう。

心筋梗塞や脳卒中などの疾患によって死亡する確率は、野菜や果物の摂取量が1単位増えると4%下がり、糖尿病の発症率も果物をほどほどに食べている人の方が低いと考えられている。

ちなみにじゃがいもを野菜だとイメージする人もいるかもしれないが、じゃがいもは「白い炭水化物」となるので注意してほしい。じゃがいもはフライドポテトやポテトチップスといった悪しき食品の代表格でもあり、糖尿病や肥満のリスクを高めることが研究で示されている。