衆議院総選挙で28議席を獲得した国民民主党。公約に掲げた「手取りを増やす政策」の中で、注目を集めているのが「年収の壁」の撤廃だ。政治部記者が解説する。

「現行の税制では年間所得が103万円を超えると所得税がかかり、さらに扶養から外れることから世帯での税負担が増えることになります。そのため、年末が近づくと、夫の扶養に入っているパートの主婦やアルバイトの大学生が、この103万円の壁を超えないよう、制限をかけてしまう。この103万円の壁を撤廃し、178万円まで引き上げることで、働き手の手取りが増え、さらに年末の人手不足も解消できる。若者の手取りを増やすという点で、実にわかりやすい政策のひとつと言えます」

 だが、この減税政策に反発の姿勢を見せているのが財務省だ。国民民主党玉木雄一郎代表は10月31日に自身のⅩでこう投稿した。

《財務省がマスコミを含めて「ご説明」に回っている効果はさすがです。今朝の朝刊は各紙こぞって「7.6兆円の減収」「高所得者ほど恩恵」とネガキャン一色》

 財務省の職員が、「年収の壁」を死守しようと大手マスコミや自民党議員に働きかけている姿が目に浮かぶが…。玉木代表は11月3日放送の「日曜報道 THE PRIME」(フジテレビ系)に出演し、改めてこのネガティブキャンペーンに真っ向から反論した。

 番組で取り上げたのは自民党・加藤勝信財務大臣のこんな発言だ。

「国・地方で7~8兆円程度の(税の)減収と見込まれる。高所得者ほど減税の効果が大きくなる」

 加藤財務大臣の発言について見解を聞かれた玉木代表は、「財務省としては当然、そういう発信になると思います」と前置きしてこう続けた。

「ただ、裏から言うとですね。7兆円、国に入ってくるのが少なくなるということは、7兆円手取りが増えるということなので、それはどう考えるかということと、7兆、8兆の根拠はですね、1回財務省からも説明をしてもらいたいと思っています」

 その後、玉木代表は選挙戦前と選挙期間中に全国をまわる中で、アルバイトをする若者世代だけでなく、親の世代も「103万円の壁」を気にしていると指摘し、労働供給の制約をなくすべきだと訴えた。

「財務省としては7兆円の減収を訴えて、財源の穴埋めを論点にする目論見だったのかもしれませんが、むしろその試算によって、国民の手取りが7兆円も増えることを知らせてしまったようなもの。また、この政策が『金持ち優遇』と言われる点についても、年収に比例して減税額が増えるのは当然で、“減税率”で考えると、年収1000万円の人が2.2%に対し、年収200万円なら4.5%。金持ちほど高い税率で税金を支払う仕組みは変わりません」(前出・政治部記者)

 国民民主党の公約は実現できるのか。財務省、そして政権与党との駆け引きから目が離せそうにない。

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