ハワイで見つけた本当に過ごしたい時間。

元バスケ少女は、速攻が得意だった。晴美さんは、仕事にかこつけ大垣へ。そのまま2人は付き合いはじめて、翌年には結婚した。直後の新婚旅行が今に続くルートを開く。2人とも初めてのハワイ。晴れやかな天気、伸びやかな道、ゆるやかな時間にヤラれた。

「こんな場所に経費で来られる仕事に就きたいと、22年勤めた会社を辞めたんです」(洋二さん)

最初から今の店が浮かんでいたわけじゃない。仕入れでハワイに行くなら「ハワイ雑貨を扱うサーファーズハウスとか?」と思案したらしいが、すぐ取り下げた。

「考えてみたら、2人ともサーファーじゃないし、カルチャーなら、ハワイよりLAあたりの雰囲気が好きだったので」(晴美さん)

それなら……と洋二さんの脳裏に浮かんだのがMTVや’90年代のアメリカ映画の風景だ。不良たちが集うサイドストアやリカーショップ。心躍った10代後半の記憶を辿り、設計図に落とし込んだ。

「元々仕事でCADは使っていましたからね」(洋二さん)

当初は潰れたガソリンスタンドを探したが、ない。結局、祖母の家があった駐車場にゼロから建てた。商品はハワイやLAで買った「店がカッコよくなるモノ」を並べた。売れるから、使い勝手がいいからじゃない。好きだからだ。

2019年、こうして『ABCDストアズ』は生まれた。店名はもちろん、ハワイの某店にインスパイアされたものだ。直後にコロナ禍となり、ハワイ仕入れ旅の夢がお預けになる予想外の事態に。ただ、店の支持も予想外だった。

「こういう日用品を探していた」「店構えが最高。カスタムカーの写真を撮りたい」。コアなアメリカ好き、クルマ好きが、北は北海道、南は九州から訪れたからだ。

「好きなことにこだわる人が遊びに来る店になった」(洋二さん)

今年、久々にハワイへ買い付けに行った。「思ったより買わなかったけど」「でもハワイ、やっぱ良かったね」。好きに忠実でいると、いつか夢が叶う。最高の遊び場。2人が創ったのは、それだ。

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什器の汚れも、売れない商品も「理想の店」をつくるために。

「映画で強盗に入られるリカーショップみたいにしたかった」とセンスあふれる元ネタを教えてくれる洋二さん。だから当初はレジカウンターは全面金網貼りだったとか。「でもお客さんと話しにくくて、すぐやめました」(晴美さん)

JR大垣駅から徒歩10分の場所にある、アメリカ映画に出てくるコンビニのような雑貨店。あくまで「ガソリンスタンド風」なので、給油はできません。

店舗横に停めてあるのは、フルサイズのキッチンカー。「近日中にここをキッチンにしてアメリカンチャイニーズを提供する予定」。楽しみだ。

店先においてあるPayphone(公衆電話)ブース。実はこれ、ブースごと洋二さんがワンオフで作った代物。