全日本テニス選手権の現状が厳しい話を前回しました。活性化させるためにターゲットを明確にして、大会の意義をはっきりとさせて方向性を決める必要があると感じています。ただ、ターゲットを1つに決められないというのが、様々な方面に配慮しなければいけない協会という組織なのかもしれません。
色々なアイデアはあると思いますが、地区大会などの予選を実施して多くの人に門戸を広げながら、上位選手にも出場してほしいという両方を叶えるためには、2つに分けるしかないのではないでしょうか。
例えば、今まで通り地区予選を行ない予選やワイルドカード(主催者推薦)を多く取って64名が出場できるようにして、誰もが頂点を目指せる大会というスタンスを維持します。その64名を4つのグループに分け、その中で1位を決めます。ここまでが1段階目で、予選のような位置付けです。
第2段階目は決勝トーナメントで、各グループで1位になった4名と、世界ランキングの日本上位4名の8名で対戦して頂点を争います。この決勝トーナメントの実施時期を、ATPとWTAがツアーファイナルズを行なうシーズン最後の時期にするか、新シーズンが始まる直前の年末にします。時期は上位選手たちが出場しやすい時を優先して決めると良いでしょう。
今の日本のトップ4は、男子が西岡良仁、ダニエル太郎、内山靖崇、錦織圭、女子が大坂なおみ、内島萌夏、柴原瑛菜、本玉真唯です。アメリカを拠点にしている選手は違う意味で出場は難しいという現実問題があるにしろ、彼らの試合が見られるなら、観客にとっては魅力的に感じるのではないでしょうか。もちろん、スポンサーも集めやすくなります。
そうすれば、賞金額を上げられますし、トップ4にはツアー大会のようにアピアランスフィー(出場報酬)を支払うことも可能です。同時にATPやWTAツアーファイナルズのように待遇を良くして、選手に出場したいと思わせる大会にしていけば、トップ選手も出場を考えるのではないでしょうか。
理想は10代選手たちが予選を勝ち上がり、決勝トーナメントでトップ4と対決して、それぞれの立場でガチンコ勝負が見られる場になると最高ですね。トップ4は1年間ツアーを戦った疲れがあったり、年末開催の場合はトレーニングで追い込んだ後なので、元気な若手が金星を挙げてもおかしくありません。
今年の全日本の女子優勝者は19歳の石井さやがですが、15歳で優勝した森田あゆみのように、もっと若手が活躍していいと思います。現在の世界のテニス界は、15歳、16歳で一般のITFツアーに出場している場合が多いですから、日本でも15、16歳で頂点を取るつもりで臨めば、より活性化されると思います。
文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン
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