【取材】元乃木坂46・高山一実「バラエティ自信なかった」「卒業で変わった仕事観」

深夜の小説執筆が出会わせてくれた、私の新しい「個性」

乃木坂46として活動中、高山さんは自身の新たな才能を見出します。2016年、雑誌『ダ・ヴィンチ』で短編小説『キャリーオーバー』の執筆、そして長編小説『トラペジウム』の連載がスタートしたのです。

「お喋り好きだから、普段から伝えたいことが溜まっているんです。でもアイドルとしては、話さないほうがいいことと、話したほうがいいことがあって。その狭間にある気持ちを消化する場所を探していたら、それが小説でした」

連載はやがて書籍化され、高山さんは自分の居場所を見つけた気がしたと言います。

「本になるってことは認めてもらえたということなのかなって。やっと『これが私の個性だ』って思えました」

深夜にひとり言葉を紡ぐ時間は、高山さんにとって特別なものでした。友人との約束も断りながら、締め切りに追われる日々。でも、それは苦しいというより、むしろ充実感がありました。

「私、深夜に感傷的になるんです。普段と違う自分になれて。気づけば没頭している自分に『あ、小説書いてるじゃん、私』って。寝不足でも楽しかったですね」

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乃木坂46卒業後に訪れた“病み期”。でもそれは、恥ずかしいことじゃない

10年の活動を経て、高山さんは「もう若い子と同じ衣装を着るのは年齢的にきついかな」と感じ、乃木坂46からの卒業を決意します。しかし、卒業後の生活は想像以上に困難なものでした。

「グループを辞めた後、気分的に落ち込んだ時期がありました。ステージに立ちたい、目立ちたいという気持ちはまったくなかったんですけど、メンバーと話していた日常がなくなることがすごくしんどくて」

初めての環境で新しい出会いもある中、高山さんは一時期、家から出られないほどの精神状態に。しかし、この経験は彼女の価値観を大きく変えることになります。

「私、今まで『病んだことがない』のを長所だと思って生きてきたんです。でも思い直しました。それってすごく恥ずかしいことだなって。つらい気持ちになれる人のほうが、同じ状況の人に寄り添えるじゃないですか」

さらに高山さんは、タレント、MC、絵本作家としても活動の幅を広げていく中で、はたらく価値観も変化したと言います。「仕事をしながら自分のスキルを上げないといけないと思うようになった」と、真剣な眼差しで語ります。

「今までは目の前の仕事を一生懸命こなすことが成長につながっていました。でも、このままだと、いつか『何も取り柄がなくなっちゃった』ってなりそうで。今は仕事をしながら、『別の軸で自分の個性を磨かないといけない』と考えています」

かつて自分の「個性」に悩んでいた高山さんは、今、複数の「個性」を持つ表現者として、新しい夢に向かって歩み始めています。