かつて京浜工業地帯を支えた巨大な貨物列車ターミナルだった新川崎は、今や「品川から3駅に住まう」などというまやかしのような呪文でファミリー層がおびき寄せられる新しい街に変貌している。 ――結局、住まう...
いつもの風景に見知らぬ男が…
娘の幼稚園のママ友から、バスのお迎えに行くお誘いだった。“可愛いママさんスタンプ”を返して準備をはじめた。ボーダーカットソーのありふれたアラフォー主婦の姿に着替えて、そそくさとエントランスに向かった。
「凛ちゃんママ~、やっと来た~」
「ごっめ~ん」
いつものように、肩をすぼめて両手で手を振ると、ママ友も笑顔で迎えてくれる。毎日会う面子だけど、彼女たちがどんな音楽を好きか、どんな映画が好きかを真央は知らない。
流れるように天気の話をしながら、いつもの如くマンションのありふれた風景になった。
――…?
ふと気づく。
どこかで、誰かが自分の姿を見つめていることを。
その主に気づいたのは、ほどなくしてのことだった。
【#2へつづく:言われたくない! ただのオジサンになった「元彼からの一言」に怒りが…】
(ミドリマチ/作家・ライター)