鈴鹿サーキットで行なわれたスーパーフォーミュラの最終ラウンドを、太田格之進（DOCOMO TEAM DANDELION RACING）が完全制圧。土曜日と日曜日のレースを、いずれも勝利した。
日曜日の第9戦を終えた太田は、ポールポジションに並んだ野尻智紀（TEAM MUGEN）には絶対負けないという強い気持ちを持って、スタートに臨んだと明かした。
物語は土曜日の第8戦予選に遡る。この予選Q1のB組では、赤旗中断からの再開時に先頭でコースに飛び出していった野尻を、太田が逆バンクでオーバーテイク。その後太田はペースをコントロールして、アタックへと向かった。しかしこのペースコントロールに野尻は憤慨。その煽りを受けてQ1敗退……第8戦決勝レース後には、太田に関する強い想いを無線で訴え、最終戦である第9戦では「太田には絶対負けない！」と宣言した。
迎えた第9戦の予選で野尻は、前日の宣言通りに魂の籠った走りを披露し、ポールポジションを獲得。太田は2番手につけた。予選後の会見でもふたりの間には険悪なムードが流れ、緊張感あふれる時間となった。
しかも決勝は、このふたりがフロントロウに並んだ。どんな1周目になるのか、観客や関係者は固唾を飲んで見守ったが、この戦いを制したのは太田。一気に野尻を抜き去って先頭に立つと、その勢いのままにトップチェッカー。前日に続いて連勝してみせた。一方野尻は、レース序盤にペースが上がらず、4位に終わった。
「レース前は正直、絶対勝ったるという気持ちでした。1コーナーで並んだら、絶対に引かないと思っていました」
太田はそう語った。
「初めの1〜2周目でOTS（オーバーテイクシステム）を使い切ってでも絶対抜くと思っていたし、それくらいの気持ちでスタートしました」
「僕の方が加速が良かったので、1コーナーに横並びで入っていって、自分の望んだ展開になったなというところで前に出られたし、そこからはペース的には負ける気はしないというか、クルマは昨日同様に素晴らしかったし、何の文句もないレースだったと思います」
ただレース後には野尻と話し、今ではしっかりとわだかまりは解消できているという。
「レースが終わってから、野尻さんと少し話をしました。お互いちょっと感情的になったりした部分もあったけど、これからもリスペクトを持ってやっていきましょうという話をしました」
「なので、今はどうこうというのは全くないです」
そんな太田だが、レース中一度ポジションを落としそうになるシーンがあった。それはピットストップのタイミングでのこと。2周ほど早くピットインした坪井翔（VANTELIN TEAM TOM’S）にアンダーカットされそうになったのだ。
「アウトラップは、ちょっと苦戦したところがありました。僕らが遅かったのか、トムスさんがすごい速かったのかは正直分かりません」
「5秒くらいのマージンを持ってピットに入ったんですけど、結構詰め寄られてしまって……坪井選手のペースが速いのも分かっていたし、簡単に抜き返せるかも分かりませんでした。そんな中でポジションを守ることを最優先に考えて、それを実行できたことは良かったと思います」
太田はこの後、アメリカのIMSAのテストに参加することが決まっている。鈴鹿での2連勝は、それに向けても良い挨拶がわりになったことだろう。
「来週デイトナのテストがあるので、それに向けてもSFで連勝してきたよという結果を持っていけるのが、やっぱりベストだと思っていました。それが実際にできたので、気持ちよくアメリカにいけると思います」
「向こうは向こうでまた別の難しさというか、初めて起きることというのもすごく多いと思うので、再び気を引き締め直していきたいと思います」
なお太田の連勝、そしてタイトルこそ逃したもののシーズンを通じて牧野任祐が活躍したこともあり、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGは2024年のチームチャンピオンに輝いた。
