1980年代は、ロボットアニメの長い歴史のなかでも、実にたくさんの作品が世に送り出された時期として記憶されます。それら作品を彩ったヒロインのなかで、恋愛において実に不憫な扱いを受けた3人を見ていきましょう。
黒前髪ぱっつんの女性がアム。『重戦機エルガイム』ポスタービジュアル (C)創通・サンライズ
【これぞ曲線美】こちらピタッとした赤いスーツがお似合いな『ゴーショーグン』のレミーです こんな美女が悲恋とか余計ホレるわ!
選ばれなかった理由は「恋よりも大事なことがあった」から?
1980年代には数多くのロボットアニメが放送され、各作品それぞれに魅力的なヒロインが物語を彩りました。ただ、彼女たちのなかには恋愛において悲しい運命をたどったヒロインも多いことに気付かされます。
たとえば、1984年から放送が始まった『重戦機エルガイム』のヒロインである「ファンネリア・アム」は、思いを寄せていた主人公「ダバ・マイロード」との恋が実ることはありませんでした。
同作は前年に放送されていた『聖戦士ダンバイン』の後番組となる、富野由悠季監督の一作です。「惑星コアム」から立身出世と妹の行方を求めて都会に出てきた青年のダバは、支配者の「オルドナ・ポセイダル」による政治の腐敗を知り、やがて反乱軍を率いて、人型ロボット兵器「エルガイム」でポセイダル軍との戦いを始めます。
アムは元々、盗賊の一員で、エルガイムを獲物に狙ったことがきっかけとなってダバに惚れ、紆余曲折を経て腐れ縁のような関係になりました。その後、ポセイダルの親衛隊である13人衆のひとり「ガウ・ハ・レッシイ」も仲間に加わり、アムとレッシイはダバをめぐる恋敵となるのです。
どちらがダバと結ばれるのかと気になるなか、ダバの義妹「クワサン・オリビー」という新たなヒロインが登場したことで、思わぬ結末を迎えます。最終話でオリビーの精神が崩壊し、ダバはオリビーの介護のために隠棲することを決意するのです。そして、アムとレッシイは、旅立つふたりを涙ながらに見送ることとなりました。
長い間、思いを寄せていたものの、結果的に結ばれなかったヒロインといえば、1980年に放送が始まった『宇宙大帝ゴッドシグマ』の「春日理恵」も当てはまるでしょう。
同作の舞台は2050年の地球で、250年先の未来からやってきた「エルダー星人」によって木星の衛星「イオ」を占拠され、イオ生まれの主人公「壇闘志也」が、イオを取り戻すためにロボットの「ゴッドシグマ」に乗って立ち向かうという物語です。
主にオペレーターとしてサポートする理恵は、闘志也に好意を寄せていました。しかし、闘志也は戦いを重ねていくなかで出会ったエルダーの総司令「テラル」によって、250年後の地球人がエルダー星人を虐殺しているという事実を知り、これがきっかけとなって理恵の恋は実らない結末を迎えます。
というのも闘志也は最終話にて、エルダーと地球の争いを食い止めるために、タイムシップに乗って未来の世界へ旅立ってしまうのです。彼を見送る理恵は心のなかで「エルダーに平和を……闘志也」とつぶやきながら涙を流すのでした。
悲しすぎる恋の結末は、1981年放送の『戦国魔神ゴーショーグン』に登場するヒロインにも訪れました。悪の秘密組織「ドクーガ」と戦うための巨大移動要塞「グッドサンダー」には、スーパーロボット「ゴーショーグン」のパイロットが3人いて、そのなかのひとりがヒロインの「レミー島田」です。
第12話「別れのモンマルトル」ではレミーが、生死不明だったかつての恋人である画家「フランシス・ルグラン」と再会します。再びふたりの恋が始まるかと思いきや、フランシスはドクーガの幹部「ブンドル」とつながっていました。やがてレミーは、フランシスがドクーガと関わっていること、さらに彼が金に汚い性格に変わってしまったことを知ります。
フランシスを変えてしまったブンドルに憎しみがわくなか、フランシスとレミーを消すためにドクーガの部隊がやってきます。レミーは身を挺してフランシスをその銃撃から守るも、フランシスは自身が描いた絵をかばったところで被弾し絶命するのでした。
その後、レミーの吹っ切れた様子が描かれたものの、恋人との運命的な再会から悲劇の別れとなる展開は、ヒロインに対してあまりにも酷い結末なのではないでしょうか。