新川崎の大規模マンションに暮らす真央。「量産型主婦」を自覚しているが、かつての真央はバリバリの個性派女子だった。そこでかつての想い人に会ってしまう。同じ趣味やセンスを持っていた彼もまた、普通の中年パ...
趣味は真逆だけど、優しい夫に惹かれた
喪失感は、自然とため息となって吐き出される。するとその異変に文敏が気づき、顔を覗きこんできた。
「ママ大丈夫? さっきから変だよ。疲れているんじゃない?」
掃除を変わってくれるという。優しい夫に素直に甘えることにした。
真央と夫・文敏は、就職して間もない頃、当時勤めていた会社の同僚が開いてくれたバーベキュー大会で知り合った。
同い年で車が趣味の彼。嗜好は真逆だったけど、銀二と真逆の誠実な性格に惹かれた。そして、ドライブデートでじわじわと親交を深めた。
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彼の子どもと名前に「共通点」がある?
サブカル男とは違って新鮮だった(写真:iStock)
ドライブのBGMは彼の友人が編集してくれたというJ-POPヒット曲集。どれも真央の脇を通り抜けていたものばかりだったが、彼の趣味に合わせるように、あゆのSEASONSを慌てて覚えた。そして30歳の時に結婚…。
その頃を思い浮かべながら、ソファの上でスマホを眺めていると、学生時代の仲間で銀二との共通の友人・賢雄からLINEが届いた。
『おっつう~』
川崎で親の代から続く居酒屋を経営している賢雄とは、今でもたまに彼の店で顔をあわせる。映画マニアだが、仕事柄どこか軽さのある陽気な男だ。
タイミングからして、銀二がこの再会をLINEか何かで告げたのだろう。
真央は重たい気持ちで既読をつける。適当なスタンプで返信をするつもりだった。しかし、その内容に真央の目がとまった。
うちの子はキラキラネームじゃないのに(写真:iStock)
『真央の子どもの名前、リンとタケシって本当? 銀二の子供もレオンなんだろ!? やべぇな』
やべぇな、とは。なにがいけないのか。
答えを探る中で、しばらくしてやっとその理由にたどり着いた。