公立学校の教員に残業代を支給検討も「部活動手当は1日最大3600円」…割に合わない長時間労働と処遇の実態

「お金よりも、仕事を減らして、人数を増やしてほしい」

ベテラン教師にも話を聞いてみた。五十嵐さん(仮名)は、関西の公立中学で学年主任をしている男性教員だ。

勤務歴17年を超えるベテランの彼が手を焼いているのは、学年主任としての生徒指導だという。担任の先生の手に負えない案件が、学年主任のもとにくるそうだ。

「『クラスのグループLINEで、うちの子が悪口を言われた。学校でなんとかしてくれ』というクレームを、親からよく受けます。僕たちは関与していないので、当事者同士でなんとかしてほしいのですが……。LINEやSNSに関することは前例も豊富にないので対応が難しいんですよ。最近では、子どもが急に休んで保護者から電話があり、その原因がSNSだったと発覚するケースがありました」(五十嵐さん、以下同)

さらには、残業時間に含めていいか微妙な「待ちの仕事」も多いのだという。

「本来なら17時以降は留守番電話サービスに接続するようになっていますが、その機能は一時的に切ることができるんです。『この親は夜しか繋がらない』と分かっている場合には、保護者からの電話を職員室で待つときもあります。

保護者対応に手を焼いて、管理者と保護者の間で板挟みになり、心を病んで休職をしてしまう先生もいます。先生の数はもとからギリギリでやっているので、休まれてしまうと、ますます回らなくなってしまう。そんな悪循環も、最近では増えつつあります」

五十嵐さんは家に帰り「今日は空きがなかった……」と、愚痴ることも多いのだとか。

今回の報道については、「正直言って、現場ではそんなことを考えている暇がないです。お金よりも、日中にやるべき仕事をもっと減らしてほしい。そのためにも人数を増やしてほしいですね」と語った。

――聖職とされる先生たちだが、彼らも人間だ。家庭を持つ者もいる。彼らが気持ちよく働けるように、現場に即した仕組みが作られることを願うばかりである。

取材・文/綾部まと