いよいよ木枯らしが吹く季節がやってきた。冬は寒さにより、どうしても筋肉や関節が収縮しやすくなる時期。筋肉が硬くなれば当然、柔軟性が失われ、急な動きに対応できなくなる。結果、軽い動作でも筋肉や靭帯に負担がかかり、それが腰にダイレクトに伝えられるため朝と昼の温暖差が激しくなるこの時期は、ぎっくり腰患者が急増するといわれる。
ぎっくり腰の正式名称は「急性腰痛症」。痛みの原因とされるのは、何らかの理由により椎間板内の「髄核」という軟らかい部分の圧が上がり、「線維輪」という硬い部分に傷が入ることによるものだが、原因はさまざま。ただ、寒くなると筋肉の硬直とともに背骨の動きが悪くなり、腰を屈めた姿勢になりがちなことから、椎間板の圧力が上がり、それもぎっくり腰になりやすくなる要因の一つではないか、とされている。
ぎっくり腰が起こる前には、ちょっとした兆候があるといわれ、それが座っている状態から立ち上がる時に感じる背中の痛みや動きにくさ、さらに局所的な不快感など。また、身体を前屈させたり腰をひねった際、いつもと違う痛みが出ていたら、ぎっくり腰が起こるサインだとする専門医も少なくない。
冬のぎっくり腰対策として重要なのは、まず体を冷やさないことがあげられる。ぎっくり腰は朝方に起こることが高いため、眠るときはカイロや温熱パットを利用したり、出かける際、腹巻や股上の深いタイツ・スパッツを重ね着をすることで、下半身の冷えを防ぐことも重要だ。また、身体を外側だけでなく、内側からも温めることを意識して、普段以上に丁寧にストレッチすることも、ぎっくり腰の予防としては有効な手段になる。
とはいえ、それでもぎっくり腰になってしまった場合は、どうすればいいのだろうか。ぎっくり腰は瞬時に激しい痛みを伴う場合が多い。そのため、まずは患部のアイシングが必要になるが、その場合は1時間につき10分から15分ほど冷やすのが目安。冷やす期間も発症から48時間以内にとどめておこう。というのも、痛みがあるからと言って、いつまでも冷やし続けるとかえって回復が遅れてしまうからで、炎症が落ち着いたら逆に患部を温める方向へと切り替え、痛みが我慢できる範囲で動いていた方が早く完治する、というのが現代医学の常識になっている。
ただし、ぎっくり腰の厄介なところは一度やると再発しやすくなることで、これは線維輪にできた傷が完全に修復されず残ってしまうことが原因とされるので、やはり傷が修復する3日程度は安静が必要になるだろう。
そして徐々に痛みが和らいできたら取り入れてもらいたいのが、腰の痛みを緩和するツボマッサージだ。人間の体には膝の裏にある「委中」ほか、「腎兪」(背骨から指2本分外側)など、腰痛に効果的といわれるツボが多数ある。膝のお皿の下、指4本分下にある「足三里」なら寝たままの状態でも押すことができるので、呼吸を整えながら心地よい程度にゆっくり押してみるといいだろう。むろん、普段から腰ツボマッサージを行っていれば血液の循環を促し、腰痛予防も期待できる。寒くなる季節。是非試してみてはいかがだろうか。
(健康ライター・浅野祐一)