2024年11月、「Final Cutファミリー」と言える、「Final Cut Pro/Final Cut Pro for iPad/Final Cut Camera」が更新された。その内容をざっと見ていきたい。
レビューは出荷前のバージョンであることをお断りしておく。
Final Cut Pro 11(for macOS)
今回のバージョンアップでは、整数のバージョンナンバーが変わることからApple社の意気込みが感じられる。M4 Macなどのイベントに合わせず、独立して発表したことからもそれを感じる。
これまでのFinal Cut Pro(10.x)は2001年出荷と、15年近く続いたものであるがそこからの変化である。アプリケーションの体験からも、このバージョンへの意気込みを感じる。
基本的にはこれまでの10.xと見た目/操作/設定など変わりがない。正直、外見だけならメジャーアップデートと思うこともないだろう。
そんなFinal Cut Pro 11だがどのような進化があるだろうか。
新しい機能
- AI機能
[マグネティックマスク]
マグネティックマスクはAIの力で映像中のオブジェクトを判別し、そのマスクを作成する。もちろん、オブジェクトの動きにも追従する。これによるオブジェクトの演出的な色の変化はもちろん、補正にも利用できる。もちろん「切り抜き」での演出もできる。
以前のバージョンの「シーン除去マスク」はどちらかといえば差分マスクの要素が強かったが、それに比べて「マグネティックマスク」は自由度が高い。
[文字起こし]
Appleが作成した言語モデルを使ったAI文字起こしにより、簡単にタイムラインの内容のキャプションを作成できる。しかも”高速に”だ(M1 Proにて英語ではあるが、56分47秒の文字起こしを47秒で処理)。
ただし、残念ながら現状サポートされるのは英語のみだ。これはこの機能がOSに依存しているもので、現状はOSがまだその他の言語に対応していないからだ。ただしそう遠くはない将来、対応される予定だ。この際に翻訳の機能も搭載されるかもしれない。
- 空間ビデオ対応
同社はApple Vision Proを出荷し「空間ビデオ」を提案したものの、実はその編集に対しては具体的な答えを出せていなかった。そしてその答えを出してきたのだ。
現状、空間ビデオへの対応しているものは高級専用ソフトか、強引に編集ソフトに機能追加されたものだ。残念ながら一般の使用にはハードルが高い。しかし、Final Cut Pro 11では、元々その素養を感じさせるものだったが、見事にインテグレートされて使いやすいものとなっている。
編集作業自体はごく普通の映像編集と変わらないように見える。しかし、実際は3D効果を得るための左右の視差を生む2画面分の加工を行わなくてはいけない。そのための処理が裏で行われる。表ではそれを意識させないようになっている。もちろん「素」の状況の確認も可能だ。
撮影素材にはiPhone15Pro/16/16Proはもちろん、その他の撮影機材で空間ビデオとして撮影されたものもサポートする。もちろん書き出しも考慮されたものになっている。
またApple Vision Proとの受け渡しもスムーズにできるよう考慮されている。
空間ビデオだけではなく、従来からある360°そしてその2D/3Dも引き続きサポートする。
なお、空間ビデオの編集にはApple Siliconが必要になる。これは記録フォーマットとなるMV-HEVCの処理はApple Silicon動作のOSにインテグレートされているからだ。
動作必要環境
- macOS14.6(Sonoma)
- 8GB RAM(16GB推奨)
※いくつかの機能は、Apple Silicon搭載のMacとSeqoia(macOS15)が必要
金額などに関してはMac App Storeを参考にして欲しい。既存のユーザーはフリーアップデートだ。
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Final Cut Pro for iPad 2.1
バージョンが小数点以下の更新であるように、基本的には小さな変更だが、使い勝手の上がる変更になっている。
新しい機能
- ライトとカラーの補正
これはMac版のFinal Cut Pro 10.8 から搭載されていたもので、Final Cut Pro for iPadにも追加された。AIによって自然な色補正が可能になるものだ。例えば特徴のある光源での色補正は、通常の場合、単純にホワイトバランスで「白」に合わせる調整が行われるが、多くの場合、不自然な結果となる。この機能ではAIの処理により自然な補正が行われる。機能は「カラー調整」から利用できる。
- 新しいライブドローイング
新しく水彩画調やクレヨン調などがペンに追加されアニメーションなどを描くことができるようになった。
- インターフェースの調整
ピクチャインピクチャがリサイズできるようになったりと、インターフェースの設定の自由度が上がった。ピクチャインピクチャは以前のバージョンでもできたが、大きさを変えることはできなかった。
今バージョンから大きさを変えることができるようになったが、これだけでも意外と実用度が上がった。広くタイムラインを使うことができ、作業効率が上がる。
余談だが、ピクチャインピクチャを利用した作業の様子はひと昔前のハイエンドコンポジティングシステムのようだ。特にペンでの使用がさらにそう思わせる。
- ハプティックフィードバックの追加
Apple Pencil ProやMagicKeybordなどハプティックエンジンを搭載したデバイスは、インターフェースの情報に反応するようになった。 - ショートカットの追加
キーボードでの操作をより効率的にできるようショートカットも追加されている。
そのほかにも内蔵コンテンツの追加もされている。
動作必要環境
- Apple M系 チップを搭載したiPad、iPad mini(A17 Pro)
金額などに関してはApp Storeを参考にしてほしい。既存のユーザーはフリーアップデートだ。