〈【推しの子】完結〉赤坂アカが連載中に決めていた1つの覚悟「嬉しいこともいっぱいあるんですけど、それ以上に責任が重く…」

大人気漫画『【推しの子】』が、11月14日発売の「週刊ヤングジャンプ」50号で約4年半の連載に幕を閉じた。主に原作を務めた赤坂アカ氏に完結した現在の心境を聞いた。(全3回の1回目)

【推しの子】堂々完結。その結末について

――約4年半にわたる『【推しの子】』の連載を終え、今はどんな気持ちですか?

赤坂アカ(以下同) しばらく、のんびりしたいですね。もっと「生活」に根付いたことがしたいと思っています。

――やっぱり、連載期間は落ち着いて生活することはできませんでしたか?

それでも『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』(以下、『かぐや様』)を連載していた頃よりは全然よかったです。あの頃は人間の生活をしていなかったので(笑)。今回、原作だけに注力できたことで、ちょっとずつ「生活に重点を置いてもいいのかな」と思うようになりました。今は「農作業でもしたいな」と考えてます。

――「『【推しの子】』は当初から大まかなプロットが固まっていた」と、これまでの発言で明かしていますが、完結まで想定通りに進みましたか?

はい。エンディングに関しては想定通りに進みました。

ただ、『【推しの子】』は最初に決めるところと、決めないところをちゃんと区切っていました。最初からすべてを決めて進めることもできるし、昔はそういうタイプの作家だったのですが、『かぐや様』を描いたことで変わったと思います。

作者にも見えていなかったキャラクターの内面がポロッと見えてくることがあって、僕はそれをキャラの人格として愛したいし、それを大事にする作家でありたいと思ったんです。その結果、1から10までぜんぶ決めることは、もうほぼ不可能になりました。

だから『【推しの子】』はエンディングこそ決まってたけれど、同時にキャラクターも大事に描いた漫画だと思うし、それが自分の個性になったんじゃないかと、自分では思っています。

――その最たる例はMEMちょ(めむちょ)ですよね。最初はサブキャラの想定だったはずが、横槍メンゴ先生の作画も相まって赤坂先生のお気に入りになってメインキャラクターに昇格したというエピソードは有名です。他にそういった「キャラクターが動いて変わった」部分はありましたか?

アクアですね。かなり性格が繊細になったと思います。当初のアクアは誰にでもわかるような気持ちで動いてるところがあったと思うんですけど、後半は気持ちを表に出さず、読者にもそれを秘密にしているというキャラクターになりました。 

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「次の作品をまた読んでもらえる作家」として終わらせたい

――それは、当初考えていたよりも深いものを抱えているキャラクターだと気づいた結果ですか?

「いろんな出来事があったせいで、いろんな心情が生まれてしまった」というか。それによって、内側に抱えている心情の動きが複雑化していった印象です。それを読者に見せなかったのは不親切なところもあると思いますが、それは僕が『【推しの子】』でやりたかったことの一部でもあります。

――ここ数年、『エヴァンゲリオン』や『進撃の巨人』『呪術廻戦』など、巨大コンテンツの最終回が続いているように思います。『【推しの子】』もそれに連なる作品だと思いますが、そうしたビッグコンテンツの終わらせ方について気にかけていた部分はありましたか?

「短く終わる漫画が増えたな」とは思っています。消費の早い業界の中で、「おもしろい作品」として終わりたいという思いが強いのかなと。その中で自分の好きなタイミングで終わらせられるようになったり、やりたい終わらせ方で終わらせられるようになったのは、作家としては「いい時代になったな」と思っています。

『【推しの子】』については「アニメが続く限り原作を続けたい」という気持ちもあるんですけどね(笑)。

――それは意外でした(笑)。

でも、メンゴ先生もいるので。僕らは「次の作品をまた読んでもらえる作家」としてやっていきたいと思っているので、そのためには、やっぱり最後までおもしろくないと。

――以前のインタビューでは「メンゴ先生を『【推しの子】』で長く拘束するのには気後れがある」といった旨の発言をしていましたよね。

もちろんそれもあります。メンゴ先生は一人で描ける方なので。『【推しの子】』はそもそも僕がメンゴ先生に頭を下げて、お願いして始めた部分がありますから。なので、『【推しの子】』はそういう点では「僕の自分勝手」と思っている部分はあるんです。

だからこそ、おもしろい作品であるうちに終わらせないといけない。「読者にとっても、メンゴ先生にとっても、いい作品で終われるようにしたい」という気持ちはずっとありました。