お互いを知り尽くしたダニエル太郎と内山靖崇が15 日開催の「兵庫ノアチャレンジャー」準々決勝で激突!<SMASH>

「昨日よりも、今日の方が良いテニスができた」――。

 ダニエル太郎と内山靖崇の両選手は、いずれも試合後に、同じような言葉を口にした。現在ビーンズドームで開催されている、兵庫ノアチャレンジャー(11月11日~17日/ハードコート/CH100)の2回戦を突破した後のことである。

 ダニエルは1回戦で、内田海智相手に6-2、3-6、6-4の苦しい戦いを強いられた。初戦で日本人と当たる緊張もあってか、「狭く考えすぎて、自分の可能性を狭めている感じだった」と振り返る。

 対して2回戦では、マテイ・ドディグに6-2、6-2で快勝。サービスが走り、ストロークでもリズム良く強打を左右に打ち込んでいく。「余裕を持ち、色んなことをしながらプレーできた」と語る表情にも、満足感が滲んでいた。

 他方で内山は、初戦はガイデン・アウデンに6-3、7-6(6)の勝利ながら、2回戦ではウー・トンリンに7-6(3)、4-6、6-3の大熱戦。それでも内山は、「試合時間は昨日の方が短かったが、今日の方が疲労感はなかった」と振り返る。

「今日は昨日よりも、はるかに自分の打っているボールのコントロールができた。狙った所に打てているんで、ある程度、次の予測もしやすい」

 自分が試合を制御できているとの自信から、精神的な余裕も生まれる。スコアだけでは読み切れぬ快勝の真相が、本人の言葉にあった。
  今年32歳を迎えた内山は、今季ATPチャレンジャー2大会で優勝。9月末にはランキングも135位に達し、ここ3年間で最高の数字を記録した。

 その充実の訳を、本人はまずは「フィジカル」に求めた。ここ数年はケガに悩まされたが、今はそれがない。連戦をしても大きな疲労や身体の痛みがないことが、何より大きいという。

 さらには「年齢を重ねて、大人になったかな」とも、やや恥ずかしそうに加えた。今季は1人で遠征に行くことも増え、その間に、戦略面や自分の強みについて考える時間も増えたという。加えて、同期で昨年引退した関口周一にコーチを依頼したことも、プラスに働いたという。関口は現役時代から、頭脳派で知られた選手。その戦略家と話す中で、「自分の考えの答え合わせができた」と内山は言った。

 そして、充実の心技をかみ合わせる最後のパーツが、「父親になったこと」。今夏、第一子の誕生を迎えた内山は、子どもと向き合う中で「我慢強くなった」と目じりを下げる。

「子どもが、なんで泣いているのかわからないとか、どうやったら寝かしつけられるかなとか、自分の思い通りにいかないことに、どう対応するか頭をひねらせている」

 そんな日々の営みが、コート上でも生きているというのだ。
  その内山が、明日(11月15日)の準々決勝で対戦するのは、ダニエル太郎。2人は学年的に同期で、「小学生の頃から知っている」仲だ。

 ただ、練習は幾度も重ねてきたが、意外にもプロになってからの対戦は1度だけ。昨年10月末のシドニーチャレンジャー1回戦で、その時は内山の棄権に終わった。なおダニエルは、最終的のこの時の大会を制している。

 内山はダニエルとの再戦に向け、「難しいですね」と口にした。

「練習は本当にたくさんやってきてるので、手の内はわかりきっている。考えすぎて自分が迷うような展開にだけはなりたくない。お互いのプレーがわかっている中で、その日の“出来”をコートで出せるかが、鍵じゃないかなと」

 淡々とそう語る内山は、「特別な作戦はない」とも言った。
  対するダニエルは、内山を「調子が良い時と、そうではない時がわかりやすい」と分析する。

「調子が良い時は、リターンから前に出て、ダブルスみたいなプレーをしてくる。爆発的な動きを持っている選手なので、ウッチー(内山)は調子が良ければ……特にハードコートだったら、誰が相手でも勝てるポテンシャルを持っている」

 それが、ダニエルの内山評だ。

 もっとも今の内山は、その日の状態や相手に応じて戦術を変え、調子が良くなくとも我慢強く戦う、精神的な強さも身につけている。

 対するダニエルも、直近のチャレンジャー2大会で優勝と準優勝の結果を残し、調子は上向き。

 1年ぶりの同期の再戦は、互いの現在地を測る上でも、そして来季への足掛かりを作る上でも、重要で趣深い一戦となる。

取材・文●内田暁

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