【トライアウト】柿木蓮、櫻井周斗、吉田凌…甲子園を沸かせたスターピッチャーたちの再チャレンジ「まだ野球やりたい。できる場所があるなら頑張りたい」

 甲子園を沸かせ、プロの門を叩いた3人のピッチャーたち。厳しい世界での戦いの中で非情宣告を受け、再チャンスを求めてトライアウトに挑んだ。

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☆春夏連覇の1番右腕

 名門・大阪桐蔭高で1番を背負い、現中日の根尾昂、現ロッテの藤原恭大らとともに甲子園で春夏連覇を達成。華々しい実績を引っ提げ日本ハム入りした柿木蓮もトライアウトに参加した。

 まず元巨人の菊田を外角低めのストレートで簡単に追い込むと、最後は低めの変化球で空振り三振。続く元中日の三好大倫もレフトフライに打ち取り、安定した投球を見せた。

 幾度となく大舞台を経験しているが「僕は元々緊張するので、そのまますごい緊張しながらやりました」と意外な一面を告白。この日には「自分が何をアピールできるのかっていうのを考えた結果、やっぱりストライク先行っていうところが一番に上がっていたので、そこはすごい意識していました」とコントロールを重視していたと明かした。そのうえで「欲を言うならもっとスピード出るかなと思ってたんですけど、スピード抜きだったら変化球もコントロールできました。思った通りできたかなと思います」と頷いた。

 最後に「みんな頑張ってるんで、できることなら僕もまだ野球やりたい。できる場所があるなら頑張りたい」と各球団で頭角を表わしつつある同年代との共闘を思い描き、球場を去った。

☆シリーズも経験のスライダーピッチャー

 吉田凌は東海大相模高から中日に入団した小笠原慎之介と二枚エースとして甲子園優勝を経験し、オリックスに入団。20年には35試合に登板とブルペンでチームに貢献し、翌年には日本シリーズで5試合に登板するなど存在感を示した。2023年になると、一軍で19試合に登板したがオフには戦力外通告。今年はロッテに育成として入団し、5月に支配下を勝ち取ったが一軍では打ち込まれ、2年連続の戦力外を受けた。

 この日は29番目に登板した吉田は、元ヤクルトの西田明央をサードゴロに打ち取るも、元ロッテの菅野剛士にはライトへツーベースヒットを打たれ、マウンドを後にした。

 役目を終え「70点か80点ぐらい」と自己評価し「しっかりと勝負はできたのかな。あとはフォアボールを出さないことを意識したので、まあまあ、まずまずだったかな」と頷いた。ウィニングショットの独特な軌道のスライダーについては「それでプロになれたのもありますし。それでいい経験も悪い経験もしたんで。それはどんどんこれからもう磨いて頑張っていこうとは思います」と言葉に力を込めた。

 ことしはZOZOマリンでの開催ということもあり「最後の最後にあの姿を見せれたらよかったと思います」と微笑み「これからまた違うところで姿を見せれるように頑張っていきたいなと思います」と熱狂的なファンの後押しも受け、先に進むと宣言した。
 ☆甲子園を沸かせた清宮キラー

 日大三高時代の2年時、櫻井周斗は夏の甲子園予選の決勝で清宮幸太郎から5打席連続三振を奪い注目を浴びると、3年の選抜高校野球では履正社の安田尚憲から3打席連続三振を奪取。左腕から繰り出される必殺のスライダーを武器にDeNAに入団し、1年目の初登板で勝ち星を挙げるなど大きな期待を背負ったが、度重なる怪我にも泣かされた。2023年オフには楽天に現役ドラフトで移籍するも結果を残せず、今オフに非情通告を受けた。
  この日、櫻井は12番目に登場し、元広島の曽根海成を代名詞のスライダーで見逃し三振に打ち取るも、元ロッテの菅野剛士にはフォアボールを与えて役目を終えた。

 登板後は「何かを変えなきゃいけないっていうところで、制球や、変化球の精度を約1か月ずっと練習してきて、その成果が一人目で出せたのはすごい良かったなと思います」と清々しい表情で第一声。最初の奪三振には「特に左バッターだったので、自分の武器であるスライダーを最後に投げきれればいいなと思って、キャッチャーもそれにサイン出してくれたので、その通りに投げられてよかったです」と満足感を口にした。

 左肘の故障もあったことにも「それも含めて、そうなった後に楽天で今年一軍に行けることになったので、そういう意味では怪我をして苦しい思いをしてからも投げられたこと、今年に関しては、そこは自分でも誇っていいと思っています。これからいい経験としていけるように今後頑張っていきたいです」と前を向いた。この先は「NPB。もちろん育成でも」とし「社会人の企業はもうちょっとお話を聞いてみて判断したい」とNPB第一の考えを示した。

 それぞれ甲子園を沸かせたピッチャーたちが示した覚悟が各球団に届くことを祈りたい。

取材・文●萩原孝弘

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