〈わいせつ保育士に懲役14年判決〉ネットは「男性保育士いらない」の声…それでも現場が「必要」とする理由とは

人柄や個人の性格が大事

保護者に警戒されがちな男性保育士の中には、子どもに人気がある人もいる。

「アクティブに遊んでくれたり、運動遊びなどは活発で助かる。抱っこするにも、腕にぶら下げて遊ぶにも、男性は力があるので。

ただ、男性保育士はみんな人気があるかっていうと、そういうわけではない。性別よりも、大事なのは人柄です」

昨年、大手学習塾「四谷大塚」で起こった講師による盗撮事件は、保護者たちに大きな衝撃を与えた。

その他、学童保育やベビーシッターなど、子どもに関わる場での性犯罪の報道は後を絶たず、かといって、利用しないと生活が成り立たない家庭もある。日本版DBSの導入も予定されているが、表に出ていないケースもあり、万全な体制ではないのが現状だ。

「結局、『そういう男性保育士を採用したのが悪い』という話になると思います。採用のときに見極められたらいいですが、それは難しい。面接しただけで、わかるのでしょうか?

ただ、男性保育士が排除されるようになれば、男性保育士は萎縮する。誠実に仕事と向き合う男性保育士だっているのに、犯罪が多いと、そういう目で見られてしまう。『男性保育士は大丈夫?』みたいになると、働きづらいだろう、気の毒だなって思うこともあります」

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必ず保育士が2人以上で、は無理?

採用時の判断が難しいとなると、職場でトラブルが起きない体制にするのはどうだろうか。学校や学習塾などで、異性と2人きりにならないように子どもに教えるのも自衛手段の一つだ。保育園の保護者が気にするおむつ替えや着替えなども、複数の保育士が立ち会う体制にできるように思うが…。

「保育園の持ち場で、保育士が1人になってはいけないというのは、難しいですね。保育士が何人かその場にいると犯罪の抑止力になるとしても、人手が足りない保育園だったら無理かなと思う。

比較的、働く人の多い公立の保育園でも、やっぱり1人になることはありました。お昼寝のときとか、保育士が交代で休憩を取り、1人で見て回ったりする。常にというわけではないですが、1人で見なければいけない時間帯は必ず出てきます」

それでも、「男性保育士を雇わない」という考えはおかしいと、この女性保育士は考える。

「やっと男性保育士が増えてきた。この数十年、年月をかけて、ようやく男性保育士が普通になってきたのに、安全を意識しすぎて雇わなくなるのは、せっかく積み上げてきたものがなくなるような感じがします。

力仕事とか、高いところに手が届くとか、不審者の侵入に対する防犯の対応や、ヤンチャな子の対応など…。ほかに、男性保育士がいると精神的に助かる部分も大きいんです」

 男性保育士がいることで、職場の空気も変わってくるという。

 「誤解を恐れずに言えば、現状の保育現場は女性中心の職場が多く、人間関係がギスギスしがちです。私も、転勤先で男性の上司がいない園もありました。用務の高齢男性でも、男の人がいると職場の空気が変わって、優しくなれる。確かに、女性だけでも頑張れば何でもできますよ。今だって精一杯、男並みにみんな闘っています。

それでも、男の人が職場にいるというのは健全だなと思います。表現が難しいですが、男女バランスよくいるといいですね」