22歳で本塁打王も…オリックスの暗黒時代を支え続けたT-岡田が「苦しくて、しんどかった野球」の呪縛から解放された瞬間

山本由伸から聞いたMLBのリアル

日本の球団のみならず、世界各地のいろいろなチームを見てみたいと話す岡田。今年オリックスからMLBロサンゼルス・ドジャースへ移籍した山本由伸投手からの話も刺激になっているという。

「この前、僕ロサンゼルスに行ってきたんですけど、由伸が言うんですよ。『日本にいるときに聞いてた話とちょっと違いました』みたいな。メジャーってキャンプも練習終わるの早いしそんなに練習しないって聞いてたけど、みんなめちゃくちゃ練習しますよって。

たとえば(ムーキー)ベッツ、彼は試合前のルーティーンで守備のドリルとかもけっこうやってるし、 疲労を考慮されて5回ぐらいで交代した試合でも、そこから試合終わるまでバッティングゲージでずっとバットを振ってると。『みんなめちゃくちゃ練習してますよ』って言ってましたね」

現役時代、練習の虫だった岡田が、今その練習から解放されて、ふと不安になることはないのだろうか。

「やっぱ体は気持ち悪いですよね。体を動かさないと気持ち悪い。だからやっぱりトレーニングはやってます。これから誰かに教えるってなったとき、だらしない体の人に教わるより、いい体してる人から教わる方がやっぱり説得力ありますもんね(笑)」

岡田の引退は、オリックスの一つの時代の終わりとも言える。彼が今、若い選手たちに伝えたいことを聞いた。

「伝えたいこと……そうですね。何するにしても、『もっと考えてやったほうがいい』ってことですかね。どうやったらもっといい成績を残せるか考えてやったほうがいいよ、っていうのは伝えたい。今でも十分に考えてやってるかもしれないですけど、ちょっと浅いんです。もうずっとずっと奥まで自分自身を掘り下げていってほしい。

そうやって掘り下げて、練習ではいい形でできても、試合でそれが出せなくなる。結果が出ない、成績が残せない。僕はその繰り返しの日々に『ああ、疲れたな』って感じたときに引退を決めました。僕なりにやりきれたかなと思ったので」

ところで、「T-岡田」の登録名に変更した当時のオリックスの監督で、ブレイクのきっかけを作った岡田彰布監督に報告したのだろうか。

「岡田監督にも連絡したんですよ。『引退します』って言ったら『お疲れさん。おーん、何年やったんや?』って。『19年やりました』って言ったら 『19年もできたんや。よかったやん』って言ってくれましたね」

栄光と挫折を何度も繰り返してきたT-岡田。これからも歩み止めることなく、野球道を突き進む。その足跡はいつかオリックスの未来とつなぐ標となるだろう。

取材・文/西澤千央 撮影/集英社オンライン編集部

T-岡田●1988年2月9日。大阪府吹田市出身の元プロ野球選手。左投左打。2005年にオリックス・バファローズに入団。2009年シーズン終了後に「岡田貴弘」から「T-岡田」に登録名を変更すると、2010年に本塁打王を獲得。2024年シーズンを最後に現役引退。