東京タワーのバンジーで大爆笑。バンジーオタクが作った半分アナログの「VRバンジー」

表現活動と商売は違う。笑ってもらえるなら、理想の形と違ってもいい

――改めて、野々村さんのキャリアを教えてください。

ラジオが好きなので、新卒でラジオ業界の営業職に就き、12年間はたらき続けました。やりたいことを仕事にしたい性格なので、ぼんやりと「ゆくゆくは独立したい」と考えていて、営業の仕事を通じて「自分のアイデアを形にする方法」について学んでいました。

30歳を過ぎて1年くらいは無収入で生活できるくらいのお金が貯まり、「バンジージャンプをビジネスにする」という軸も定まったので、33歳で独立して今に至ります。

――苦境でもあきらめずに継続するメンタルは、どのように培ってきたのでしょうか?

タフな性格ではなく、緊急事態宣言下は「このままでいいのかな」と思うこともありましたが、友人やパートナーなど周りの応援してくれる人の期待に応えたいという思いと、自分が今まで積み重ねてきた努力に報いたいという気合いで踏ん張れたと思います。

また、VRバンジージャンプのおもしろさを自信に変えていました。「自分がやっていることはおもしろい」という確信が、継続力につながっています。心が折れないよう、疲れた時は思い切って数日休むのも大事だと感じました。

――VRバンジージャンプの会場では、大爆笑が起きているそうですね。

見ている人も体験している人も、よく笑いますね。VRゴーグルをつけてはいるものの、シーソー型の装置に乗って、それを係員が逆さにしているだけなので、悲鳴を上げて怖がっている様子がちょっと滑稽なんです(笑)

もともとの大きい体験装置からバージョンダウンして気付いたのは、表現活動と商売は違うということです。僕はバンジージャンプの恐怖感を忠実に体験できる表現活動を目指していましたが、みなさんはもっと楽しくお手軽なバンジージャンプ体験を求めていました。

バンジージャンプオタクなので、こだわりをもっと追求したい気持ちがありますが、求められたことに合わせていくのが商売です。皆さんに笑って喜んでもらえるなら、今のお手軽な楽しさをもっと伸ばしていこうと考えています。いつかは自分の意志で飛び込める体験装置も作りたいですね。

(文:秋カヲリ 写真提供:株式会社ロジリシティ)