11月3日、“アザラシと泊まれるコテージ”についての投稿が炎上。2日で1億以上の閲覧数となっており、注目度が高いことがうかがえる。そこで今回はノースサファリサッポロについて関係各所へ取材を敢行。アザラシの死亡件数になぜか違いが出ていて…。
炎上中の動物園が運営するコテージ
11月3日、“アザラシと泊まれるコテージ”に宿泊した利用客がX上に画像付きの投稿をした。
投稿主はアザラシと過ごせたことを喜んでいたものの、このコテージのアザラシがいるスペースが狭く、また利用客にずっと見られ続けるのはかわいそうだとX上で物議を醸し、同投稿閲覧数は2日で1億を超えている。
シングルベッドが2つ並ぶ客室から、窓ガラス越しにアザラシが見える構造だ。
アザラシがいるスペースは、まさにシングルベッド2つ分くらいの広さで、水位もベッドと同じくらいの高さだ。
壁に覆われた狭いスペースにいるアザラシは客室の方を向き、利用客は目と鼻の先まで近づくことができるようだ。
話題のコテージは「日本一危険な動物園」として知られるノースサファリサッポロ内の施設・アザラシコテージ。
通常の動物園より解放的に動物が暮らしており、誓約書を書かないと入場できないデンジャラスゾーンがあったり、免責事項として「全て自己責任です」との看板が立てられていたりするほど。
そんなコテージが「眠りづらかった」とする投稿や、「アザラシはエサの時間以外、閉じ込められたままだった」との投稿もある。
さまざまな意見があふれるなか、目立ったのが「コテージのコンセプトそのものが虐待ではないか」「残酷すぎる」と言った声だ。一方で、「可愛い」、「泊まってみたい」と言う声もあり、動物に対する考え方が多様であることがうかがえる。
実際、アザラシがシングルベッド2つ分ほどのスペースで人間と対面し続けながら半日以上過ごすのは、アザラシの健康上ストレスになるのだろうか。
ノースサファリサッポロに営業許可を出している札幌市保健福祉局保健所動物愛護管理センター(あいまるさっぽろ)に取材したところ、指導課係長から以下のような回答を得た。
――立ち入り検査を実施した上で、営業許可は続いているのか?
「さまざまなご指摘を受け、立ち入り検査をしたのは事実です。
第一種動物取扱業を持っている業者に対し、相談があったら日常的に検査をしているもので、年何件もあり、ノースサファリサッポロさんに限った話ではない。結果は非公開にさせていただいています。
一般論として、動物の愛護及び管理に関する法律に抵触があれば指導します。
指導しても何度も繰り返し問題があれば命令、勧告までして、それから営業停止になるので、指導だけですぐ営業停止にはなりません。
営業停止になった例として、犬猫は基準が厳しくケージの大きさのサイズが合っていないなどを繰り返した場合が挙げられます。
ノースサファリサッポロさんのコテージに対し指導があったか無かったかはお答えできません」
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海獣学者が回答
では、アザラシにとって適した環境とはどんなものなのか。アザラシ保護施設の飼育員はこう話す。
――アザラシのストレスの少ない環境とはどんなものなのか。
「野生に近い環境の方がストレスが無いのは確かですが、飼育下で何がストレスかは環境によります。
単独行動していた子を急に多頭の群れに入れたりしたら、その環境の変化がストレスになることもあります」
――野生に近い、というと海水でなるべく広い環境ということか。
「飼育する場合、海水の方がいいが、すごく広ければ良いとも言い切れないです。
なぜなら、広すぎることで掃除が行き届かないということが起こりうるからです。それよりは狭くても掃除がきちんとされている方が良い場合もあります」
国立科学博物館の海獣学者・田島木綿子氏は物議を醸しているコテージのアザラシについてこう話す。
「彼らは人間のTOY(おもちゃ)ではありません。彼らも生き物で、生きるためにはきちんとした環境、状況が必要であり、哺乳類である彼らはさらに心の拠り所、心の安静もとても重要だと思います」
一方で、ノースサファリサッポロを運営するサクセス観光はニュースメディア「ピンズバニュース」の取材で、
《動物の状況は全員が共有、最善の対策を行なうように心がけています。同じ動物種でも性格に違いがあり、グランピングには人が大好きな子を置くようにしています。昼間はスタッフと遊んだりしています》(ピンズバニュースより引用)
と話している。ノースサファリサッポロ独自の飼育論や動物園を運営するための考え方がそこにはあるのだろう。
そんな中、集英社オンライン取材班は、ノースサファリサッポロが過去5年間で9頭中7頭のゴマフアザラシを死亡させていたことが分かる資料を入手した。
2015年から2020年の5年間でのアザラシの死亡頭数について、サクセス観光に確認すると、
「たしか老衰で一頭だけだったかな」
と要領を得ない回答だった。資料と食い違うアザラシの死亡頭数。はたしてこの園に管理能力はあるのだろうか…。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班