世界1位ゴルファーの飛ばしの秘訣とは…?あえて「手元の動き」は抑える!

すべてのプロゴルファーが目指す最高の栄誉「海外4大メジャー」を制した選手のスイングをピックアップ。

オーソドックスな動きのなかにある飛ばしの工夫や、変則的なスイングに隠された安定性のコツなど、強さの秘密を解説していく。今回は世界ランク1位のスコッティ・シェフラーのスイングを解説する。

手元の「変化量」を抑えて安定性アップ
シンプルでもフルパワーなスイング

アドレス〜テークバック

特徴的な点はふたつ。ひとつ目は腕がやや突っ張っていること。ヒジを曲げすぎないで大きなアークを描いてスイングしたい意図が感じられます。ふたつ目は体重がやや左足にかかっていること。これはバックスイングでしっかり右足へ体重移動するための準備でしょう。

腕や手首を曲げずに始動し、足の体重配分はこのタイミングでは5:5に見えます。アドレスで左に体重をかけた状態からスタートしていることを考慮すると、本人の感覚的には左4:右6くらいに感じているかもしれません。

バックスイング


Point
バックスイングが完了する前から右足を蹴り返している(画像左)

トップポジションに入る直前のコマを見ると、すでに右足はターゲット方向へ出力しています。これによって上半身と下半身に捻転が発生、パワーを生み出す源泉になっている。

トップでは手首のコック(タテ方向の角度)が浅いですが、ヒジが曲がることで運動量を補完。コックが少ないと、インパクトゾーンでのロフトの変化量を抑えられる効果があります。

ダウンスイング


Point
手首のタメは強くなく、入射角は鈍角(画像右)

クラブが振り下ろされると同時に、左肩は回転しながら上昇。この反作用でクラブはさらに加速されていきます。左腕とシャフトが作る角度は比較的「鈍角」でいわゆる“タメ”は大きくありません。

タメが強いとリリース時の加速は期待できる一方で、ヘッドの入射角がバラつくリスクが出てしまう。タメが少ないと入射角が一定になりミート率が安定するので、飛距離と正確性を両立させることができます。

インパクト〜フォロースルー


Point
手元を見ると腕の回転や手首の運動量は極めて少ない(画像左)

インパクト直後の形を見るとまるでパターでも打ったかのよう。腕のローテーションや手首の動きがとても少ないです。

このとき、体重はほぼ完全に左足に移っていて体の回転はクラブの遠心力に任せきっています。そのため体の右サイドが進行方向へスライドしてきますが、あくまでこの動きは受動的であり、本人が意図して行なっているものではありません。

いかがでしたか? スコッティ・シェフラーのスイングを参考に安定性アップを目指しましょう。

Scottie Scheffler(スコッティ・シェフラー)
●1996年生まれ、アメリカ出身。190cm、90kg。米ツアーでメジャー2勝を含む通算13勝を上げており、パリ五輪では金メダルを獲得。世界ランクは堂々の1位に君臨する。インパクト以降、大きくスライドするフットワークが特徴で、今シーズンの平均ドライビングディスタンスは303.8ヤード。

解説=アッキー永井
●ながい・あきふみ(永井研史)/ 1987年生まれ、神奈川県出身。“アッキー”の愛称で親しまれている人気コーチ。人体解剖学や物理学の視点を取り入れたわかりやすいレッスンや解説に定評がある。

写真=田辺JJ安啓

※選手の成績やデータは9月14日現在