4年前に公開された石破茂首相の動画が、現在になって炎上している。物議を醸しているのは、茶碗の持ち方や箸づかいなどの“テーブルマナー”に関してだ。しかし、これについては「海軍式の作法であり、軍事オタクの石破首相なら納得だ」という擁護の声も上がっている。先日も石破首相は燕尾服の着こなしについて批判を受けたが、実際のところ、彼のテーブルマナーはどうだったのか。専門家に話を聞いたところ、意外な答えが返ってきた。
4年越しに炎上した石破茂首相の食事作法
11月11日に衆議院本会議で行なわれた総理大臣指名選挙を経て、第103代首相に選出された石破茂首相。第2次石破内閣が本格的に始動するなか、さっそく首相指名選挙中の居眠り疑惑が指摘されるなど、首相としての振る舞いに国民から批判の声が上がっている。
そんななか、4年前に公開された動画内での石破首相の「食事マナー」について、SNSを中心に物議を醸している。
問題の動画は、お笑いジャーナリスト・たかまつなな氏のYouTubeチャンネルで公開されたもの。当時、自民党総裁選で落選したばかりの石破茂首相に対し、食事を交えながら本音をインタビュー形式で引き出す、といった内容の動画(前後編の2本)だった。
現在話題となっているのは、動画の13分あたりの場面。サンマの塩焼きを前にした石破首相が、箸を片方ずつ使い、両手で身をほぐし始めるシーンだ。
石破首相は食事を進めるが、その際にも箸の握り方が少々不自然なうえ、茶碗の縁に指を引っ掛けて持つ姿も確認できる。その後、サンマを箸で大胆に持ち上げ、そのままひっくり返して食べ始めた。
こうした場面が切り抜かれ、ネットユーザーによってXに投稿されると、該当する複数の投稿が数百万のインプレッションを記録。4年の時を経て、まさかの“炎上”となった。
なかには擁護する声も多く見られるが、実際のところ、石破首相のテーブルマナーはプロの目にどう映ったのか。日本サービスマナー協会に所属し、テーブルマナーからフォーマルマナーまで精通するマナー講師・加藤瑞貴氏に、動画を確認してもらった。
「箸を両手に一本ずつ持って食べ物をほぐしたり切ったりするのは、『ちぎり箸』にあたります。たしかにテーブルマナーを指導する際には、『しないように』とお伝えしています。
箸の持ち方に関しては、動画の角度によるところもあるかもしれないのですが……男性の場合、手が大きくて細い箸だと持ちづらく、指をかぶせているように見えることもあるかもしれません。
また、配膳された魚の向きを変えることは、あまりしないかと思います。向きを変えずに骨を皿の奥に移動させるなどし、その際も高く持ち上げないようにと、講座などでもお伝えしています」(加藤氏)
やはりプロの視点から見ても、石破首相の作法はあまりよろしくないようだ。しかし、加藤氏は意外な評価ポイントも見出している。
「ただ、食べ終わったあとのお魚が綺麗で、とても感動いたしました。どんなに箸づかいが美しくても、皮が散らばっていたり身が残っていたりすると、マナー違反になってしまうことがありますので」(加藤氏)
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NGマナーの“渡し箸”は、お店に対する気遣い!?
動画では、石破首相はサンマの皿に、テーブルマナーでは一般的にNGとされる“渡し箸(食事中に食器の上に箸を置く行為)”をする。しかし、これにも加藤氏は「気遣いがあったのでは?」と推測した。
「たしかに動画の後編でも食事をされている様子が収録されていますが、編集されたものが公開されていると思うので、動画どおりの順番で料理を召し上がっていたとは限りません。石破首相はサンマをご飯やお味噌汁と一緒に召し上がっていたため、サンマが最後の締めだったのかもしれません。ですので、『箸はお皿に置いてまとめたほうが、お店の方が片付けやすい』という気遣いがあったのではないでしょうか」(加藤氏)
後編の動画では、卓上に「トンッ!」とおちょこを置く場面や、箸でつかんだものをバウンドさせるような動作も見られる。加藤氏は、これらはともにNGとしつつも、料理によっては推奨される箸づかいであるとも解説する。
「正式な食事のマナーとしては、つかんだものは静かに口に運ぶように、と私自身もよく指導されてきました。なので、動画内の様子は“探り箸”に似ているのかなと思います。
ただ、煮物など水分の多い料理をつかんだときに、汁をだらだらと垂らしてしまうのは“涙箸”と呼ばれ、好ましくありません。もしかすると、動画内でも水気を切るためにトントンと箸を使っているのかもしれません」(加藤氏)
NGを連発してしまった石破首相だが、撮影場所となった店舗を知っているという加藤氏は、さまざまな事情があることにも理解を示している。
「実は私、このお店を知っていまして。入ったことはないのですが、少しカジュアルなお店なんです。首相ご自身が好んでこのお店を選ばれたということなので、肩肘張らずに食事を楽しまれていたのかもしれません。
たしかに、研修などで『これがマナーです』と教えている内容とは異なる部分もありました。しかし晩餐会などの正式な場ではないですし、そこまで厳密に気にしなくてもよいのでは?というのが私個人の意見です。それに、この動画は4年前に公開されたものですので、今は改善されていらっしゃるかもしれません」