スペインのカタルニア・サーキットで行なわれているMotoGP最終戦ソリダリティGP。このグランプリでは、ここまで苦戦してきたホンダが大きなサプライズを起こし、シーズンを最高の形で締め括る可能性がある。
というのも、ホンダ勢は走行初日に目立った速さを見せたからだ。FP1ではLCRホンダの中上貴晶がトップタイムを記録すると、予選Q2行きのかかったプラクティスでは、中上のチームメイトであるヨハン・ザルコがトップのフランチェスコ・バニャイヤ(ドゥカティ)から0.279秒差の4番手に食い込んだのだ。
中上は惜しくもトップ10に入れずQ1スタートとなったが、ポイントリーダーであるホルへ・マルティン(プラマック)をも上回って見せたザルコのアタックは、最終セクターでスリップストリームの恩恵を受けられたことを差し引いても、陣営にとって期待の持てる結果になったと言える。
今季のホンダはコンストラクターズランキングで最下位に沈むなど大苦戦しており、予選でQ2に進むことや、決勝でトップ10に入ることさえ難しい状況が続いている。ザルコはファクトリーチームを抑え、ホンダ陣営で最も多くのポイントを稼いでいるが、それでも決勝レースでの最高位は8位にとどまっている。
しかし今回の結果を受けて、ザルコは最終戦の予選で1列目もしくは2列目のグリッドを狙えると考えているようだ。彼はプラクティスでベストタイムを記録した次のラップでも速さを見せていたが、その際小さなミスを犯さなければさらにタイムを縮められたという手応えがあったという。
「(プラクティスでのアタックは)ベストラップのひとつだったと思う」とザルコは言う。
「タイでもアラゴンでも良いラップを記録できていたけど、今回(セッションの)終盤までに既に良いタイムが出せていたのは良かった。最後のタイヤでのアタックもコンマ何秒かタイムを上げられるポテンシャルがあったと思うけど、少しミスしてしまった」
「結局タイムを改善することはできなかったけど、明日に向けてポジティブだ。でも午後のプラクティスの内容には満足しているし、この調子でいければと思う。1列目、2列目に入るチャンスがありそうだし、明日そうなれば最高だ」
「(レースで)タイヤを消耗した時はバイクの挙動も変わってきてしまうだろうけどね。そこに向けた解決策があるかどうかはわからないけど、少なくとも速さを見せて、それからコントロールできるように頑張るよ」
シーズン前半はマシンの開発が進まず、ほとんど進歩が見られなかったホンダだが、夏頃からは明らかな上昇傾向が見られる。ザルコがトップ10フィニッシュを記録したレースは、いずれもここ最近のアジアラウンドだ。
レプソル・ホンダのルカ・マリーニも、今回ザルコがQ2に進んだことはホンダが正しい道を歩んでいることの証明だと語った。
「ヨハンは非常に速く、驚異的なタイムを記録した。マシンの進歩、僕たちがもたらした開発が功を奏している。それを証明できたのは良かった」
「ザルコは今日すでにタイヤのセッティングを完璧な状態に仕上げている。僕もホンダと共に取り組んできたことにはとても満足している。前回のプラクティスでは、僕たちホンダ勢は最後尾に固まっていたけど、今回は全体的に良いポジションに散らばっていて、さらに1台がQ2に進出している」
またマリーニはザルコがタイムを稼いでいるであろう場所について、コーナーのミドルでうまくスロットルを使ってバイクを加速させられているとコメント。またコーナー出口のトラクションは本来ホンダにとっては弱点と思われるが、ザルコ自身はコーナー出口を得意とするためバイクのポテンシャルを引き出せており、ドゥカティ勢よりもコーナーの脱出が早く見えると分析した。
そのザルコに後れをとったのがヤマハ勢。彼らは積極的なアップデートによってパフォーマンスを飛躍的に上げているように見えるが、ヤマハのライダーであるアレックス・リンスはチームの首脳陣に対してホンダRC213Vのメカニカルグリップが向上していることを伝えたという。
リンスは次のように語る。
「ホンダがヤマハより少し良くなっているというのは、今に始まった事ではない」
「いくつかのレースで、ホンダの方がメカニカルグリップが良いとチームに言ってきたのは事実だ。グリップがとても低いこのようなコースでは、彼らの方が有利に見えるんだ」