結婚と妻をとっとと手放したその先で
この最初の離婚までに、聖子自身には公私ともにいろいろなことが起きた。
「公」のほうでは、所属事務所サンミュージックからの独立、海外アメリカ進出、セルフプロデュース…「私」の部分ではいくつかの恋愛スキャンダルに見舞われ、神田正輝との関係も仮面夫婦と言われはじめる。
そしてついに、神田との離婚が発表されたときに思った。
「ああ、聖子ちゃんはもう結婚はいいんだな」と。
二枚目映画スターとの「聖輝」の結婚、かわいい子どもにも恵まれた。
かねてインタビューなどでしばしば聖子が言葉にしていた「歌が大好きだから!」のとおり、まだまだ仕事はしたい、なんなら恋だって自由に…そんな松田聖子に「夫」などというものはもう必要ないんだろうな……そんなふうに感じられたのだ。
1997年ごろの日本といえば、バブルはとうに弾け、前年1996年には社会党の村山富市内閣が突然の退陣を表明、インターネットがどんどん広がり、ポケモンにたまごっち、渋谷にはアムラーがあふれて…そんな時代だ。
くしくもイギリスのチャールズ皇太子とダイアナ妃もこの年に離婚している。
もはや女性にとって結婚はステイタスでも足枷でもなく、こだわらなくてもいいもの……聖子はまさにそういう風潮を体現してくれたかのようだった。
さすが、松田聖子。
仕事も恋も結婚も育児もぎっちりしっかりつかまえていく彼女はかつて「握力の強い女」と呼ばれた。
そんな聖子が「結婚」と「妻」を手放した35歳。
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時代と寝たのが山口百恵なら
……翌1998年5月、聖子はとっとと2度目の結婚をした。
お相手は6歳年下の歯科医師、「ビビビっ」ときたから結婚したそうで、「ビビビ婚」なる流行語まで生み出した。
観客との掛け合いの妙が聖子のコンサートの名物だが、このころは観客席にいる自分のダンナに「センセエ〜〜〜〜」と手を振るのがお約束。もちろん聖子ファンも大いに盛り上がる。
甘く見てました、松田聖子を。
本能のままに生きるのが聖子。
それがいつのまにか時代とマッチングしてしまうのが聖子。
山口百恵が「時代と寝た女」なら、松田聖子は「時代を踏み台にする女」。
この歯科医師の夫とは2000年12月に離婚、2012年にはやはり歯科医師の男性と結婚し、現在も婚姻関係は続いている。
我々はこのあと、聖子が離婚しようと再婚しようと、腰を抜かさない覚悟はもはやできている。
その後もずーっと歌手としてさまざまなチャレンジをし続けてきた「歌が大好き」な聖子だが、今年62歳において中央大学法学部卒業という、これまたとんでもないことを成し遂げてくれた。
年齢なんて記号に過ぎない、とは昨今よく言われるけれど、松田聖子に限っては、年齢は時代との符牒…合言葉になっていることは間違いない。
たとえそれが何歳のときであっても、聖子がなにかしたなら、その年齢は特別なものになるのだ。
取材・文/集英社オンライン編集部