現在も続く大人気ドラマ『踊る大捜査線』に大きな影響を与えていたのが、『機動警察パトレイバー』です。パクリ……もといオマージュシーンを検証します。



画像は『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』 (C)2012フジテレビジョン アイ・エヌ・ピー

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『踊る大捜査線』が多大なる影響を受けた作品

 現在もスピンオフ映画『室井慎次 敗れざる者/生き続ける者』が公開されている大人気ドラマ『踊る大捜査線』は、『機動警察パトレイバー』からの影響が多々見られることがよく知られています。

『パトレイバー』のアニメ(OVA)とマンガ連載が始まったのが1988年、『踊る大捜査線』のTVシリーズが始まったのは1997年です。

 もともと押井守監督の大ファンだった本広克行監督は、『踊る大捜査線』が『パトレイバー』から影響を受けたことを公言しています。ただし、『パトレイバー』の影響を受けて『踊る大捜査線』の企画が始まったのではなく、台本をもらって読みながら「あれ? これって『パトレイバー』じゃん」と気付いたのだそうです。

 湾岸署の舞台を決めるときも、本広監督はスタッフに『パトレイバー』のビデオを見せて、特車二課と似た場所を探すようにお願いしています。結局、お台場に決まりましたが、その後、雰囲気がそっくりの場所を見つけたときは本気で悔しがったといいます。

 実際に両作品を観比べてみると、似通っている部分がたくさんあります。従来の刑事ドラマではあまり前に出てこなかった警察組織の話を中心にしたこと(公務員であることも強調されています)、犯罪よりも署内の出来事に重きを置いていたこと、シリアスな場面とコミカルの場面の緩急のバランスなどです。

『踊る大捜査線』の第1話には、主人公の「青島俊作」がパトカーで出かけようとすると書類への記入と上長の承認印が必要だと言われて腹を立てる印象的な場面がありますが、『パトレイバー』OVAの第1話には「太田功」が射撃訓練しようとすると上長の許可をもらうよう、たらい回しにされて怒る場面がありました。このような警察に関する細かな描写は、『パトレイバー』が先行して『踊る大捜査線』が後を追って、後に一般化しました。

 日本の実写映画歴代興行収入第1位を記録した『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年)にも『パトレイバー』へのオマージュがいくつも見られます。特に『機動警察パトレイバー 2 the Movie』(1993年)の色が濃く、レインボーブリッジのお台場が封鎖されたり、SAT(警察特殊部隊)が頻繁に登場したりする場面などは、同作を彷彿とさせます。

 なお、『パトレイバー2』ではレインボーブリッジが爆破されますが、『踊る大捜査線2』の特報映像ではレインボーブリッジが爆破されて青島が驚く場面がありました(本編では爆破されません)。本広監督は『踊る大捜査線2』を制作するにあたって、『パトレイバー2』を繰り返し観たそうです。

 スピンオフ作品『交渉人 真下正義』(2005年)は、『機動警察パトレイバー THE MOVIE』(1989年)と『機動警察パトレイバー 2 the Movie』へのオマージュが多数見られます。事件発生時、容疑者はすでに死亡しているというプロットにかかわるものから、象徴的なカラスの描写は『パトレイバー1』へのオマージュ、指令室がパニックになる場面は『パトレイバー2』へのオマージュです。

『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』(2012年)では、菅野祐悟氏による音楽が『機動警察パトレイバー 2 the Movie』の川井憲次氏による音楽とよく似ていることが話題になりました。これも一種のオマージュでしょう。

 この他、『踊る大捜査線』には『パトレイバー』から影響を受けた場面、『パトレイバー』にオマージュを捧げた場面がたくさんあります。両者を比較しながら観てみるのも楽しいと思います。