激闘後、万雷の拍手が鳴り止まなかった。
現地11月16日、野球の国際大会「ラグザス presents 第3回 WBSC プレミア12」のグループB・第3戦が台湾の台北ドームで行なわれ、侍ジャパンが台湾を3対1で破り3連勝を飾った。地元ファンの強烈な応援を受けたものの、惜敗した台湾だが試合後のファンやメディアは最後まで戦い抜いた選手たちに熱いエールを送っていた。
日本は初回に1死一、三塁の好機で4番の森下翔太が右犠飛を放ち、三塁ランナーの桑原が浅めの位置だったが、果敢にホームを狙いヘッドスライディングを敢行。捕手のタッチをかいくぐる間一髪のタイミングで先制点を奪った。
3回には3番の辰己涼介が今大会初ヒットとなる左越え適時二塁打で侍ジャパンが追加点を挙げると、4回には初スタメンを飾った源田壮亮が右越えソロホームラン。チーム最年長・31歳の一振りで3対0とリードを広げる。
一方の台湾は日本の先発・才木浩人を攻略できず、6回まで3安打無失点と封じ込められる。7回に7番タイ・ペイフォンが右翼スタンドにソロアーチを放ち2点差に迫ると、台北ドームはこの日一番の盛り上がりを見せたが、反撃もここまで。9回は守護神の大勢が簡単に三者凡退に抑えて2戦連続セーブを挙げ、侍ジャパンが勝利をモノにした。
チケットは5分で完売。超満員の4万人が球場に詰めかけた雰囲気は文字通り、”異様”だった。記者席にいても隣の記者の会話が聞こえないほどの声量で台湾の投手がストライクをひとつ取るごとに、スタジアムのDJが観客を煽り大熱狂。ピンチに陥れば、声を張り上げて鼓舞するように拍手で後押しして、アウトを奪うたびに地鳴りのような歓声が沸き起こった。
さらに、台湾側の攻撃時には応援のボルテージは最高潮に達する。ブラスバンドの生演奏が場内のスピーカーを通して爆音で流れると、一塁側と三塁側のステージ上で台湾チアがキュートな笑顔とキレキレなダンスを披露し、チアと一緒に踊る男性の掛け声でスタンドをさらに盛り上げる。まさに球場全体が一体となり、『打倒・侍ジャパン』という雰囲気だった。特に7回にタイ・ペイフォンのホームランが飛び出した時は場内は総立ち。記者席のある2階席では揺れを感じるほど、恐怖感すら覚えた。 応援の凄まじさは指揮官も苦労したようで、試合後の会見では「台湾の応援がものすごかったので、なかなか思うように試合運びができなかった。選手がよく頑張ってくれました」と、異様な雰囲気のなかで奮闘した選手たちを労った。普段は甲子園で阪神ファンの大声援を受ける才木も「台湾の応援がすごくて、最後は少し力んでしまいました」と振り返るほど、若い選手たちにとっては経験したことのない完全アウェーの洗礼だった。
台湾の敗北が決まった瞬間、スタジアムからは「あ~…」と落胆の声が漏れたが、すぐに両軍へ温かい労いの拍手が起こり、台湾の選手たちがマウンド付近で帽子をとり深々と頭を下げてスタンドに挨拶すると割れんばかりの大歓声が再び起き、万雷の拍手がいつまでも選手たちを優しく包み込んだ。
翌日の現地メディアを見ると、やはり日本と台湾戦に大きく紙面を割いていた。台湾の大衆紙『自由時報』のスポーツ面は「日本が国際大会の連勝記録を22に伸ばす。台湾は予選ラウンドで初黒星を喫した」という見出しを打ち、1ページ分まるまる激闘の日本戦を特集。6回まで3点のビハインドを許す苦しい戦いだったと振り返っており、「ダイ・ペイフォンが衝撃を与えた!台湾チームは日本から1点を取り戻すべく奮闘した」と、7回の反撃の場面を紹介。日本相手にわずか3失点は「健闘した」とも評している。
手に汗握る接戦で惜しくも敗れた台湾だが、ファンやメディアは強敵相手に善戦した事実を好意的に受け止め、大きな自信につなげている。その一方で新生・侍ジャパンも台湾野球のレベルの高さ、そして地元ファンの熱量から大きな経験を得たはず。若侍たちが、また一段と大きく成長できる貴重な試合になったのかもしれない。
取材・文●湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)
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