【NOAH】齋藤彰俊が完全燃焼で引退「我が心、夜空に輝く月に一点の雲なし!」 丸藤の“三沢エルボー”に沈む

『齋藤彰俊引退記念大会 -Deathtiny-』愛知・ドルフィンズアリーナ(2024年11月17日)
齋藤彰俊引退試合 ◯丸藤正道vs齋藤彰俊×

 齋藤彰俊が“三沢光晴”をまとった丸藤正道を相手に引退試合。最後はエメラルドフロウジョン、エルボーバットでごう沈し、熱く駆け抜けた34年のキャリアにピリオドを打った。

 在住地の名古屋、そしてNOAH初参戦の舞台となった愛知県体育館(現ドルフィンズアリーナ)での引退試合に臨んだ齋藤。故・三沢光晴さん最後の対戦相手となったその日から重い十字架を背負い続けてきた齋藤は、引退試合の相手に「三沢さんを感じる」丸藤を指名した。

 これまで師・三沢さんの死については軽々に語ってこなかった丸藤も「自分の人生で最初で最後、三沢さんを背負って戦う。だから2対1ですよ、齋藤さん」と心の鎖を解きながら明言。“三沢光晴&丸藤正道組”を相手に齋藤は最後のリングに立った。

 片手にファンからの寄せ書きを掲げた旗、片手に三沢さんのガウンを手にしながら、大アキトシコールのなかで入場。序盤から最後の時間を噛みしめるような真っ向勝負でやり合ったが、齋藤が亡き相棒、故バイソン・スミスさんのアイアンクロースラムで丸藤を追い込むと、スイクルデスで仕留めにかかった。

 かろうじて肩を上げた丸藤もカウンターの虎王で反撃。フックキック、虎王の連打で一気に押し返すや、真・虎王で3カウントか…と思われた。

 祈るような声援に押されて齋藤もキックアウト。ならばと丸藤はついにエメラルドフロウジョンを発射して“三沢技”を解禁だ。クリアした齋藤も三沢さんが最後に受けた技・急角度バックドロップで投げ捨てたが、丸藤…いや、三沢は素早く立ち上がってワンツーエルボーへ。そして絶叫する齋藤の顔面に三沢さんばりのランニングエルボーバットを叩き込み、完璧な3カウントが数えられた。

 最後は“三沢さん”に介錯されて34年間におよんだレスラー人生にピリオドを打った齋藤。万感の面持ちで丸藤と握手を交わすと、柔和な笑顔で家族から花束を受取り、初めてリングで“家庭人”としての表情をみせた。

 そしてマイクを握った齋藤は「皆さん、今日は名古屋のここまでお越しくださって本当にありがとうございます。プロレスリング・ノア、そしてスタッフの皆さん、選手、それから俺の宝であるファンのみんなよ。本当にありがとう! それから天におられるあの方(三沢さん)、俺の師匠(青柳館長)、そして青い目の仲間(バイソン)、本当にありがとうございます」と、あらゆる感謝を口にした。

 齋藤は続ける。「これで引退して、NOAHのプロレスファンになるけど、そうなってから最初にみられる試合が、この後のGHC戦。最高じゃねえか!熱狂して応援しようぜ!」と呼びかけたうえで、「色んな人がお疲れさまでした…って言ってくれます。心から本当にありがとうございます。でも、俺はリングを下りるその時までプロレスラーだ。倒れず、疲れないのがプロレスラーだ!」と仁王立ちで叫んで場内も大アキトシコールに包まれた。

 最後は「方舟に乗りし、我が人生。我が心、夜空に輝く月に、一点の雲なし!」と齋藤らしく“辞世の言葉”を詠んで、人生を捧げたリングを降りた齋藤。その男の背中に万雷の拍手とアキトシコールが改めて送られるなか、死神と呼ばれた男はスモークの向こう側へと消えた。