今回は、松山英樹選手のドライバースイングを解説。
卓越した柔軟性が可能にするハイトルクなスイング
アドレス〜バックスイング
Point
ワイドスタンスでクラブの遠心力と引き合う準備ができている(画像右)
アドレスでは、かなりスタンスをワイドにとっています。安定感が増すことに加え、下半身の運動は制限されるので、バックスイングで上半身とのねじれが強くなる。テークバック以降も右ヒザがアドレスの時点からほぼ動いていないのに、股関節や肩は深く回っていて、強烈な捻転を作り出しています。
トップ
とても捻転の深いトップです。右股関節にはくっきりとズボンのシワが入っていて、上半身は右肩が奥に覗けるほどねじられています。大きな体の印象とは裏腹に並外れた柔軟性をもち合わせているのでしょう。松山選手は「1度止まっているように見える」独特のトップが特徴的ですが、このポジションから静かに体重移動をしていくからそう見えるのです。
ダウンスイング
Point
体重移動しても左ヒザが逃げていかない(写真左)
ダウンスイング以降、一気に下半身をターゲット方向へ回していきます。このとき上半身が一緒に回ってしまうとア ウトサイド・イン軌道になりやすい。しかし、松山選手は右ヒジの位置が左腕よりも下にあり、これは右上腕が自分から見て、時計回りに回旋してヒジが絞られていることを意味します。
つまり、クラブがスイングプレーンからは外れていないということ。インパクト手前の写真を見ると、左腕とクラブの角度が鈍角に見えます。入射角をゆるやかにしてバックスピンが増えすぎないようにしているのでしょう。
フォロースルー
Point
肩甲骨の可動域が広いので真っすぐな腕がキープされる
フォローでは頭がしっかり残り、クラブヘッドと引き合う関係ができています。アドレス時よりもさらに顔が右を向いているのが引き合いの強さを物語っています。これは首や肩甲骨まわりの柔軟性があるからこそできることなので、アマチュアがマネようとするのはオススメしません。体重はほぼ左足に乗り切っていて、骨盤が左股関節に入っていくきれいな形をしています。
松山 英樹
●1992年生まれ。180cm、90kg。24年度は2月にザ・ジェネシス招待で優勝し、PGAツアー勝利数でアジア勢1位となった。パリ五輪では粘り強いプレーで銅メダルを獲得。勢いそのままにプレーオフシリーズ初戦のFedExセントジュード選手権でも優勝し、「アジア勢最強」の座を絶対的なものにした。
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ビューティフル・フェードを繰り出す神業リストワークスイング
アドレス
手元よりもクラブヘッドが少し前にセットされており、フェースの閉じすぎを防いでいます。打球の打ち出し角の確保にもつながるので、低いフックに悩む人はすぐにマネしてほしいですね。
左手のグリップはバックスイング中に左手が掌屈(手の平側へ折る動き)するのを計算に入れ、あらかじめウィークになっています。
バックスイング〜トップ
Point
上半身に対し、下半身の回転はとても少ないので体幹が強くねじられている(画像左)
左腕が地面と平行になったタイミングの写真を見ると、上半身が90度回転しているのに対し、下半身はさほど動いていません。
体幹や股関節が硬いと、この段階で右ヒザが伸びきってしまうことがありますが、コリン選手はアドレス時の右ヒザのポジションをトップまで完全にキープしています。
ダウンスイング
Point
左ヒザが逃げることなく股関節が後方へ回転
右足を強く蹴っているのでヒザがやや曲がりますが、それと同じくらい左足を蹴って左側のお尻を回転させています。
下半身がたくさん回転すると、つられてスイング軌道がアウトサイド・インになることがありますが、彼の場合は上半身のティルト(側屈)でそれを中和しているのです。
インパクト〜フォロースルー
Point
インパクト後に左手首は背屈(甲側へ折る動き)し、フェースの閉じすぎを防ぐ(画像右)
インパクト時の手首の形こそコリン選手の代名詞。左手を掌屈させたままインパクトを迎えています。掌屈をすると通常はフェースが閉じてロフト角が減りますが、ここでアドレス時の「左手ウィークグリップ」が効果を発揮。適切なフェースの向きでインパクトできます。
フォローでは左手首が背屈のポジションに移行。ロフト角を増やし、フェースを開く方向へ手首を開放しています。
Collin Morikawa(コリン・モリカワ)
●1997年生まれ。175cm、72kg。ツアーデビュー2年目でメジャータイトルをふたつ手中に収めるなど、華々しくキャリアをスタートさせる。24年度は安定した成績を残しつつも単独2位が最高位だが、プロ5年目でメジャー2勝を含むPGAツアー通算6勝をあげている、紛れもない天才プレーヤー。