英国で「ウインザーリム」と呼ばれ、日本では「セル巻き」と呼ばれる旧きよきアイウエアのデザイン仕様。これが英国スタイルのアイウエアの筆頭ともいうべきデザインになった背景にはどんな歴史があったのか? それを紐解いてみる。

通称〝ウィンザーリム〟の誕生。

英国のメガネと言えば、セル巻き(=Windsor Rim)が真っ先に思い浮かぶ。セル巻きとは、その名のとおりメタルフレームの外周を覆うように、薄いプラスチックの板を巻き付ける製造法。19世紀末からこの製法が存在していたことは分かっているが、いまとなってはセル巻きを作ることができる工場は非常に限られており、世に溢れているメガネの総数に対して、激減の一途を辿っている。

こと日本に限ってはもうセル巻きを作ることのできる工場は一社もない、という話が挙がるほどだ。セル巻きと言えば、数年前に英国からイタリアへと拠点を移したばかりの〈サヴィル ロウ〉も有名である。このブランドのおかげで、セル巻き=英国というイメージを持ったという人も多いだろう。

さて、この「セル巻き=英国」というイメージについて。メガネ好きの間では、ある程度認知されているにも関わらず、その詳細についてはあまり知られていない。そこで、セル巻きの起源やヒストリーの解明に少しでも近づくべく情報を集めていったところ、多少その系譜が明らかになってきたので、その結果を可能な限り調べてみた。

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1890s〜_アメリカやドイツでセル巻きメガネが作られていた。

「セル巻き」、英語名を「ウィンザーリム」。このデザインをどこが一番最初に作り始めたかは不明瞭ではあるが、少なくとも19世紀末にはこのデザインが各所で作られていた。アメリカでは〈アメリカンオプティカル〉が、まさにウィンザーの名で特許をとっており、1922年にはシュロン社と特許争いで4年間争って勝利したことまで分かっている。ドイツでは後述する「F. ビルケンシュタイン社」が、ウィンザータイプのメガネを製造していた。1894年に同社が発行していた新聞内に、イラスト化された製造風景が記録されている。

写真上/USA : American Optical(画像提供:ブロスジャパン)

写真上/Germany : F. Birkenstein and Co.(画像提供:プログレスプロダクツ)