『南海トラフ巨大地震 2』biki

◆『南海トラフ巨大地震 2』講談社/1200円(本体価格)

――物語では2025年2月11日に「南海トラフ巨大地震」が発生します。近い将来、本当に地震は発生するのでしょうか?

biki「残念ながら『必ず発生する』といわれています。そして、この未曽有の大地震が最大規模で発生した場合、死者は最悪32万人以上、経済損失は約220兆円、実に東日本大震災の10倍以上に及ぶ、壊滅的な被害が想定されています」

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――災害対策の基本は「自助」とあります。どういうことでしょうか?

biki「災害下において『何よりもまず自分自身の安全を優先すること』を意味します。しかし、本作の主人公である西藤命は地震発生時、怪我をした老人と居合わせてしまい、結果的にその老人を助けようとして、何度も命の危機に瀕してしまいます。つまり、彼は『自助』の原則には従わず、最終的にさらに取り返しのつかない事態を招いてしまう…。自分の命を顧みず、他者を助けようとすることは、道徳的に素晴らしいことですが、必ずしも“正しい”とは言えない。本作は主人公がさまざまな“過ち”を犯すことで、『自助』の大切さが浮かび上がるようなストーリーになっています」

震災は他人事でないことを知ること

――地震発生後、本当の大厄災として「富士山噴火」が指摘されていますね。

biki「現在、富士山はマグマをためにためている状態です。そして、次の巨大地震を引き金に大噴火が誘発される可能性が高い。最も危険なのは、噴出される大量の火山灰です。この粒子は微細なガラス片で、吸い込んだら人体に悪影響を及ぼすだけでなく、関東全域に降り積もることで、最大1カ月程度、停電や交通・物流の麻痺を引き起こすといわれています。これにより都市機能が完全に停止し、多くの死者が出ることも指摘されており、そのときに起きるリアルを、本作でも将来的に取り扱いたいと考えています」

――2巻では、元自衛隊員の朝霞が負傷してしまいます。今後はどのような展開が繰り広げられていくのでしょうか?

biki「朝霞には今後、感染症の危険が忍び寄ることになります。衛生状態の悪い災害下で怪我をしてしまうと、細菌感染による重症化リスクが付きまとうこととなり、防ぐためには適切な対処が必要です。本作を通じて一番伝えたいメッセージは『震災を自分事にしてほしい』ということです。人は誰でも『自分だけは死なない』と思っています。一人でも多くの方に当事者意識が生まれたら、漫画原作者として大変うれしく思います」

聞き手/程原ケン

「週刊実話」11月28日号より

biki(びき)
漫画原作者。1989年生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。現在は漫画やYouTube、アニメーションの原作をはじめ、キャラクタービジネスやIP開発のコンサルティングなども行う。