[J3第37節]福島 2-1 沼津/11月17日/とうほう・みんなのスタジアム
大宮と今治がすでにJ2自動昇格を決めている今季のJ3で、残りの最後の一枠を争う昇格プレーオフに進出できるのは3位から6位までの4チーム。
そのなか、37節で6位の福島がホームで迎えたのが、7位の沼津との大一番であった。両者にとってまさに生き残りを懸けた一戦である。
そんな重要なゲームで、輝いたのがJ1の川崎からレンタルで加入しているプロ2年目のMF大関友翔と、SB松長根悠仁であった。 ふたりは昨季、揃って川崎U-18からトップチームに昇格。ただ出場機会が限られ、今季は福島へ武者修行に出ていた。
ふたりにとって今季、監督初挑戦として福島の指揮官に就任した寺田周平監督は、昨季までの川崎のコーチ時代にも指導を受けた、いわば“恩師”だ。沼津戦では福島の選手全員が勝利への執念を見せたなか、寺田監督の下で、川崎育ちのコンビが結果を残したのも印象深い。
大関は0-1で迎えた36分、相手ペナルティエリア内に走り込み、左ウイングの森晃太のクロスに「気持ちで押し込んだ」とダイレクトで合わせて貴重な同点弾をマーク。そして松長根は78分、CKのこぼれ球を豪快に蹴り込む勝ち越し弾で、スタジアムに大歓声を呼び込んだ。
福島では憧れの川崎の大先輩・中村憲剛の14番を付ける大関は、川崎のアカデミー育ちらしく、テクニカルなプレーが特長で、この日も正確なトラップからのターンやパスで何度もチャンスを演出。
今季の大関は目に見える結果を手にしようと、相手ペナルティエリアへのランニングを意識してきたが、前述のゴールシーンもその積み重ねの成果と言える。今季はこれで8点目、試合後に本人にそう話を振れば、笑顔で答えてくれる。
「福島に来て自分の存在価値を示すために、ゴールしかないと思っていたので、1年間、キャンプに入った時から、ゴール前に入っていくことは意識してきました。そういった意味では自然と足が動くというか、自然とゴール前に入っていけるようになったので、ボールが集まってくれるのも良いことだと思います」
そして熱い想いも口をつく。
「僕が決めて、ナガネ(松長根)が決めて、いわゆるフロンターレコンビで決めて、ナガネも僕も(寺田)周平さんをJ2に昇格させたいですし、サポーターの皆さんを昇格させたい。そういった意味ではふたりで点を取れて福島の力になれたのは良かったです」
ちなみに大関は以前から「みんなにダサいと言われている」と話していたが、「気持ちが入っちゃうとああなっちゃう」と、ゴール後のガッツポーズは両手、両足を振り上げる全身で喜びを表現する姿であった。
【動画】福島×沼津のハイライト
一方の松長根は「思い切って(足を)振ったら入ってくれました」と、こぼれ球にボレーで合わせた。
川崎アカデミー時代はCBを主戦場にするも、プロでは本格的にSBに挑戦。福島ではシーズン序盤は右SB、その後は沼津戦のように左SBを務めるなど柔軟性も披露。
さらに、沼津戦ではSBの位置から中央に入ってパスの受け手になったほか、最終ラインのビルドアップが詰まると見るや、ロングボールで変化を付けるなど臨機応変さも光った。このあたりは実戦経験を積み重ねてきたからこそなせる業なのだろう。
このふたりに対して寺田監督は「嬉しいですけど、今は(福島)ユナイテッドの一員だと思って接していますし、彼らを特別視するつもりはないです。ユナイテッドの一員として若いふたりが経験を積んで、この一戦で逞しくプレーしてくれたと思いますし、大一番でゴールを決めてくれたのは本当、嬉しく思います」と目を細める。
20歳の松長根と19歳の大関。アカデミーの同級生で、戦友のふたりは、試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、いの一番に抱き合った。
「ナイス、ナイス」
ふたりで称え合ったという。プレッシャーもあったのだろう。喜びが爆発した瞬間でもあった。
もっともまだ大事なゲームは続いていく。
「気持ちの勝負になってくるはずですし、何より自分たちがやってきたことをブラさないこと。今日は最初は固くなってしまった部分が見られたので(プレーオフで勝ち上がれば最大)3試合、自分たちのサッカーをやるという強い気持ちを持ちながら、気負うことなく自分たちにフォーカスしてやっていきたいです」
大関の言葉には松長根の想いとともに強い覚悟が含まれていた。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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