第98回関東大学サッカーリーグ戦の1部を制した明治大のキャプテン中村草太が“史上初”を成し遂げた。昨年に続き、得点王とアシスト王のダブルクラウンに輝いた。
さらに付け加えれば、ベストイレブンとMVPも受賞。2年ぶり8回目のリーグ優勝を飾った明治大のエースとして、その存在感を自らの結果で示した。
「ものすごく自信になりますし、嬉しいです(笑)。チームを勝たせるというフォワードとしての役割をしっかり果たせたかなと感じます。ただ、自分ひとりの力でできることではありません。点が取れたのはアシストしてくれる選手がいたり、周りで身体を張ってくれる選手がいるからこそ、自分のところにボールが転がってくるわけで、チームみんなのおかげです」
快挙達成に至った理由を冷静に振り振りつつ、自身に矢印を向けながら、こうも語っていた。
「“昨年を超える”というのが自分のなかの目標だったので、それができなかったことが悔しいです。シーズンの最初のほうは調子が良く、得点も重ねていましたが、途中、なかなか結果を出せなくて、個人的に苦しんだ時期がありました。メンタル面も含め、そういう部分を見つめ直さないといけないですし、もっともっとやらないといけなかったなと感じています」
中村の胸のつかえの要因は、明々白々の数字にある。昨年は16得点、12アシスト。今年は12得点、8アシスト。どちらも昨年を超えられなかった。
11月17日のリーグ最終節の流通経済大戦を前に、得点王獲得に1点少ない状況だった。また、アシスト王に関しても追走する松永颯汰(流通経済大)が数字を重ねたら、ひっくり返される可能性もあった。
「(点を取らないと得点王になれなかったので)意識していなかったといったらウソになりますけど、そこはチームのためにやるべきこと、自分がやるべきことを、うまく整理しながらできたかなと感じています。思いきりや大胆さが、あのゴールにつながりました」
起死回生の一発は79分、左CKのチャンスを活かし、目の前にこぼれてきたボールを逃さず、ワンタッチで仕留めた。快挙達成に向けて、いわゆる土壇場に追い込まれながらも最後の最後にダブルクラウンを掴み取ったという点で、エースとしての底力と強運を見せつけた感がある。
「セットプレーの時はセカンドボールを狙うような位置取りをしています。予測どおりのポジションが取れましたし、思いきり足を振るのではなく、コンパクトに当てることだけを意識しました。それがうまく結果につながりました」
38分に明治大が先制しながらも68分に同点に追いつかれるという展開のなかで、流通経済大を突き放す。終わってみればスコアは4-1と、チームを勢いづかせる勝ち越し弾でもあった。
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こうしたエースの働きや影響力に目を細めつつ、さらなる成長に期待を寄せるのが、明治大の栗田大輔監督だ。以前から、次のように繰り返していたのが思い出される。
「中村の存在の大きさを誰もが認めていますし、相手チームに与えるインパクトがまったく違いますね。中村がいるから周りも活きる。でも、まだまだここからです。もっと飛び抜けた存在になってほしいし、ならなければいけないと思っています。だから、僕はメチャクチャ要求します。うるさいです(笑)」
指揮官のほとばしる熱量に、中村も負けじと応じる。
「栗田監督の要求を超えたいと、ずっと思っています。日々、そう考えながらチャレンジしてきたので、それが自分の成長につながっているのは間違いありません。栗田監督がイメージしている以上のプレーを表現して、“もう言うことはない”と言ってもらえるくらいになりたいです」
チームとしてのタイトル獲得、そして個人としての2年連続得点王&アシスト王の獲得。これらは中村から指揮官への何よりの恩返しの形でもある。
取材・文●小室功(オフィス・プリマベーラ)
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