ミリトンの再離脱でマドリーに浮上した「S・ラモス復帰説」はあっけなく消滅…冬の補強は5年ぶりに外部から? それとも宿敵バルサに倣って下部組織から?

 レアル・マドリーの守備陣に、またしても膝の前十字靭帯断裂による長期離脱者が出た。昨シーズンがティボー・クルトワ、エデル・ミリトン、ダビド・アラバ、そして今シーズンがダニエル・カルバハルとミリトンだ。そう、ミリトンは昨シーズンの左膝に続き、今度は右膝を負傷した。しかも今回は、半月板の内側と外側の両方も損傷している。

 このミリトンの怪我の深刻度について、アトレティコ・マドリーの医療部の責任者を務めた経験があるホセ・ゴンサレス氏が、スペイン紙『AS』で次のように見解を語っている。

「片方の膝を痛めるとその長い回復期において、もう片方の膝に多大な負荷がかかる。リハビリ中に神経筋のバランスが崩れ、それが今回のようなちょっとした動作で大きな怪我を引き起こす原因となる。通常の場合、重傷ではあるが、1年程度の過酷なリハビリを経れば、元の感覚を取り戻すことが可能だ。しかしミリトンの場合は、2つの理由で回復プロセスはより困難を極めるだろう。第一に、ほぼ1年前の最初の怪我から完全に回復しておらず、ベストパフォーマンスを発揮できていない中で、もう片方の足を負傷したこと。第二に、仮に完治できたとしても、ほぼ断続的に約2年間、戦列を離れることになるため、通常のレベルのチームならまだしも、常にトップレベルを維持しなければ試合に出ることができないマドリーでは自ずとハードルは高くなる」
  怪我をする前の2022-2023シーズンには、バルセロナのロナルド・アラウホと並び、ラ・リーガ最高のCBと称されたミリトンは、またしても大きな試練に直面することになったが、それはマドリーも同様だ。

 前述した通り、守備陣に怪我人が続出し(現在はルーカス・バスケス、オーレリアン・チュアメニも怪我で戦線離脱中)、ミリトンはアントニオ・リュディガーとともに開幕からフル回転を続けていた最終ラインの大黒柱だった。その彼が少なくとも今シーズン中の復帰が絶望的となり、過去に何度か取り沙汰されてきた補強の必要性がさらに増している。

 その中で、候補に急浮上したのが元マドリーキャプテンのセルヒオ・ラモスだ。ミリトンが怪我をしたオサスナ戦で『DAZN』の解説を務めていた元同僚のグティがラモスの名前を挙げた後、妻のピラール・ルビオがSNSに夫がトレーニングする様子を公開。『AS』でラモス関連の記事がアクセス数ランキングで上位を占めるなど、俄然注目度が高まった。昨シーズン限りでセビージャを退団して以降、無所属のラモスは、移籍マーケットの期限外でも獲得できるメリットもある。 しかし結論から言うと、復帰話はあっけなく消滅した。

『AS』紙は、「様々な状況が重なり、マドリーとセルヒオ・ラモスが互いに矛を収めて、再び手を携えるべきだという声が高まっていたことは確かだ。しかし、クラブ内ではそうではなかった。首脳陣はほぼ満場一致で、マドリーにおけるラモスの物語はすでに完結したと考えている。スポーツ面でマドリーの要求に応えるレベルにはもはや達していないという理由で復帰を見送った」と伝えている。

「矛を収める」という表現は、2021年にラモスが懇意の記者を巻き込んで、自分の希望する複数年での契約延長を画策したことに端を発する。しかし当時、フロレンティーノ・ペレス会長は断固として首を縦に振らなかった。そしてラモスが考えを改め、マドリーが提示する条件(単年契約)を受け入れると伝えたときには、すでにオファーは撤回されており、彼は“裏門”からの退団を余儀なくされた。
  その時に生じたしこりと、そして何よりも『AS』紙が報じている通り、全盛期を過ぎた38歳という年齢がネックとなり、バルサ寄りのスポーツ紙『スポルト』は、「カルロ・アンチェロッティ監督も再共闘を希望している」と伝えていたが、レジェンドの復帰はこのまま実現することはなさそうだ。

 クラブ幹部たちは、ここ最近下部組織の選手たちを積極的に登用して成功を収めている、宿敵バルセロナの方針に倣うことを勧めているようで、ミリトンが負傷したラ・リーガ第13節のオサスナ戦(4-0)では、Bチームの21歳DFラウール・アセンシオがトップデビュー。MFジュード・ベリンガムの今季初得点を導いたロングフィードを含め、傑出したパフォーマンスを披露した。

 いずれにしろマドリーの幹部たちは、冬の移籍市場が開くまでに、外部の選手たち、下部組織の選手たちの両方を分析しながら、最終的な補強方針を決定するようだ。

文●下村正幸

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