一般向けの「がん情報サービス」が参考になる
ただし、診療ガイドラインとは医師や医療関係者を対象とした手引書です。専門用語の解釈などに誤解が生じることもあるかもしれません。
そこでこれとは別に、患者さんや家族、一般の人を対象に、診療ガイドラインの内容などをわかりやすくまとめた「がん情報サービス」(図15)というサイトがあります*2。こちらも無料で誰でも閲覧することができるので活用しましょう。
日本には、日本人の死因でもっとも多いがんの対策や研究の推進などについて定めた「がん対策基本法」という法律(2007年4月1日施行)があります*3。「がん情報サービス」はこの法律に基づいて、「国立研究開発法人国立がん研究センター」が作成、運営する公式サイトです。
内容は、がんに関する基礎知識、診断と治療、症状と生活、予防と検診、療養生活、食事、心のケアなど、また、仕事との両立、費用、制度、情報の集めかたなど、そして、「がんと診断されたあなたに知ってほしいこと」として「がん相談支援センター」の存在と活用の勧めなどで、がんに関する多くの情報を網羅しています。
同サイトは医療者の間では、「がん情報の入り口」と言われます。
この「がん情報サービス」の情報は、ネットで閲覧できるだけでなく、冊子、チラシ、リーフレットも同サイトから無料でダウンロード、印刷することもできます。
たとえば、『患者必携がんになったら手にとるガイド普及新版』(A5判、228ページ)があります。ほかに、がんの実態調査をまとめた文書、用語集といった資料も充実しています。
患者さんの中には、「がんの診療時に担当の医師から、ネットで確かな情報を調べるときは、『がん情報サービス』のみを参考にしてください、とアドバイスされた」と話す人がいます。このように、「がん情報サービス」は、医師が患者さんに勧めるサイトの筆頭であると医療界では認識されています。
自分や家族、身近な人ががんになった場合、がんを予防したい場合、検診を受けようかと迷っている場合など、さまざまな状況でこのサイトは役に立つと思われます。
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「がん相談支援センター」を活用しよう
こうしたサイトなどを活用して情報を得たとしても、さまざまな疑問や迷い、不安が起こり、患者さんや家族ら身近な人にとって、落ち着いて考えて判断することは、とても厳しいことだと思います。もちろん、治療法や見通しについては担当の医師に相談したいところですが、相談内容や医師との相性によっては難しい場合もあるでしょう。
そこで、相談にのってくれる機関として、「がん相談支援センター」があることを知っておいてください。この機関は、全国の国指定の「がん診療連携拠点病院」や「小児がん拠点病院」などに設けられています(2024年8月現在で476カ所)。
どこにあるかは「がん情報サービス」のサイトで最寄りの施設を検索できるほか、電話やチャットで同センターを探す手伝いをする「がん情報サービスサポートセンター」もあり、手軽に問い合わせることができます。
相談窓口では、がんに関する治療、病院の選びかた、療養生活全般、仕事との両立、診察費などお金のこと、セカンドオピニオンの紹介、家族や職場にどう伝えるかといったコミュニケーションについてなど、どうすればいいのかわからないことや不安に思うことについて尋ねることができます。
無料で、患者さん本人や家族、パートナー、また匿名でも、対面でも電話でも相談が可能です。メディアから得る情報とはまた違って、自身の病状や生活状態、環境に即して、専門家からのアドバイスを得ることができるでしょう。
「何を質問すればいいかもわからないが、漠然と不安だ」「がんと言われて頭がまっ白だ。何から考えればいいのか……」といった場合でも、相談者にとって必要な情報を吟味して提供、相談にのってくれるでしょう。ぜひ活用してください。