危険な楽観主義が蔓延していたのは事実だ。バロンドールは2024年を通じて傑出した活躍を見せているヴィニシウス・ジュニオールが受賞するだろうという確信がスペイン全土に広まっていた。
私はその状況に驚きはしなかった。バロンドールの投票者の1人としてヴィニシウスに1票を投じ、1位に相当する15点を与えていたからだ。ただ同時に、コパ・アメリカでの低調なパフォーマンスと、ピッチ上でたびたび見せる不遜な態度がマイナスに作用する可能性は否定できなかった。
そしてヴィニシウスはバロンドールを逃した。受賞したのは、マンチェスター・シティのロドリだった。ヴィニシウスのように魔法を見せることはないが、際立ったパフォーマンスと安定感を保証する選手だ。
驚いたのは、落選の報を受けてのフロレンティーノ・ペレスの反応だ。私には不釣り合いにしか思えなかった。マドリーはチャンピオンズリーグの前身であるチャンピオンズカップの生みの親であり、バロンドールはそのアペンディックス(付録)として創設された。
マドリーが黎明期において大会の発展に大きく寄与し、近年再び、UEFAの枠を超えて画策している欧州スーパーリーグ構想が足かせになることなく、優勝回数を増やしている。
しかしそんなマドリーが、バロンドール授賞式への全面ボイコットに踏み切った。「負けたら握手」をモットーにするマドリーがである。私はテーブルを蹴りつけるような行動を取った背景には、ペレス会長の驕り高ぶりとクラブにここ数週間次々と降りかかった問題があるように思う。
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そこに0-4のクラシコでの大敗を含めるつもりはない。所詮は試合の結果であり、勝負事である以上、起こりうることだからだ。それよりも私が問題視するのは、前述の欧州スーパーリーガ構想の停滞に加え、マドリーが推し進めてきたもう1つのビッグプロジェクトに深刻な綻びが生じていることだ。そう、ベルナベウ・スタジアムの騒音問題だ。
周辺住民から苦情が殺到し、予定されていたコンサートはすべて中止に追い込まれた。おかげで収入が大幅に減少し、予算の見直しを迫られている。
自治政府は、本来のスタジアムの用途とは異なるこの計画に対して、非常に疑わしい形で許可を与えていた。地下にVIP向けの駐車場を作る予定もあり、それが2030年W杯決勝招致・開催の条件でもあった。
そのすべてが宙に浮き、キリアン・エムバペは適応に苦しみ、コーチングスタッフ間に不協和音が生じていると伝えられ、自身と外部の両方方向から密告者探しが行われている。
これらすべての出来事が重なってペレスはイライラを増幅させていたのかもしれない。しかし、だからといってバロンドールを巡る癇癪が正当化されることでは断じてない。
文●アルフレッド・レラーニョ(エル・パイス紙)
翻訳●下村正幸
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