今週末、ラスベガスの目抜き通りであるストリップで、2度目のラスベガスGPが開催される。このレースの注目ポイントをおさらいしよう。
■フェルスタッペンのチャンピオン獲得条件
ドライバーズ選手権でリードしているマックス・フェルスタッペン(レッドブル)がこのレースでチャンピオンを確定させる可能性がある。
現在フェルスタッペンは、ランキング2番手のランド・ノリス(マクラーレン)に62ポイント差をつけている。前戦サンパウロGPでは、ウエットコンディションのレースを17番手からスタートし、久々の決勝レースで勝利を挙げたフェルスタッペン。ノリスが6位に終わったことで、王手をかけてラスベガスGPに臨む。
今季は残り3戦。カタールGPではスプリントも行なわれるため、残り3戦で獲得可能な最大ポイントは86ポイントとなっている。ラスベガスGP後はこれが60ポイントとなる。つまりラスベガスGPを終えた時点で、フェルスタッペンが60ポイント以上のリードを保っていれば、フェルスタッペンの戴冠が決まる。
フェルスタッペンが土曜の夜、ラスベガスでチャンピオントロフィーを受け取るためには、ノリスの前でフィニッシュすればいい。また、ポジション次第ではノリスに前を行かせる余裕すらある。
フェルスタッペンの戴冠条件は以下の通りだ。
・フェルスタッペンがノリスより前でフィニッシュした場合
・ノリスが2位か3位で、フェルスタッペンがそのすぐ後ろのポジションかつファステストラップを記録してフィニッシュした場合
・ノリスが4位~8位で、フェルスタッペンがそのすぐ後ろのポジションでフィニッシュした場合
・ノリスが9位以下となった場合
つまり、ノリスがフェルスタッペンの結果に関係なくタイトル争いを続けたいのならば、優勝が条件となってくるわけだ。
フェラーリに最大で最後のチャンス到来?
コンストラクターズタイトル争いも接戦となっている。シーズン終盤のアップデートでの欠点を克服したフェラーリが復活を遂げている。
マクラーレンは46ポイント差でフェラーリをリードしているが、フェラーリは直近の南北アメリカ大陸3連戦でシャルル・ルクレールとカルロス・サインツが1勝ずつを挙げ、ライバルを猛追している。
ルクレールは昨年のラスベガスGPで、展開次第では楽に勝てるだけのペースを持っていたし、低速コーナーと長いストレートを持つレイアウトはマクラーレンやレッドブルよりもフェラーリに有利に働くと見られている。
ただルクレールは、今年のフェラーリのタイヤマネジメントの改善が、ラスベガスで直面する可能性の高い低温コンディションでの強みを不注意にも奪ってしまった可能性があると注意を促しており、フェラーリが昨年と同じように速いかどうかはまだわからない。
しかし、マクラーレンが残り3レースで最も安定した速さを見せると予想される中、フェラーリがマクラーレンを破る現実的なチャンスを得るには、ラスベガスでのビッグウイークエンドが必要だ。
カタールのルサイル・インターナショナル・サーキットの高速コーナーではマクラーレンに太刀打ちできないだろうし、アブダビではどちらに転ぶかわからない。そのため、フェラーリは今週末、マクラーレンに大差をつけ、この争いに残る必要がある。
セルジオ・ペレスの苦戦でレッドブルはフェラーリから13ポイント差の3番手に後退している。レッドブルはペレスが終盤に調子を取り戻せばフェラーリに勝てる可能性はあるが、ブラジルのようにライバルがコケない限りは現状維持となりそうだ。
レースディレクター解任の影響は?
ラスベガスはまた、F1レースディレクターのニールス・ウィティヒが突然解任されてから最初のレースウィークエンドでもある。
現会長であるモハメド・ベン・スレイエムの体制下、注目される人物が次々とFIAを去っている。
motorsport.comのの取材によると、会長との不和が原因だったというウィティヒの解任はパドック関係者の意表を突くもので、F1チームからは運営組織の安定化を求める声がさらに高まりそうだ。
F1ドライバーの組合であるGPDAは、ドライバーの悪態や宝飾品の着用などに関するFIAの強引なアプローチを嘆く公開書簡を出している。ラスベガスのパドックでは、シーズンを通して引きずってきた様々な問題についての話し合いが陰日向なく行なわれることになりそうだ。
2回目のジンクスは破れる?
映画でも何でも、2作目というのは失敗することが多いというのは世界の共通認識のようだ。今年、2回目の開催を迎えるラスベガスGPが成功できるかは大いに注目されている。
昨年の初開催はF1にとって商業的な成功を収めたと評価され、低グリップで高速のレイアウトが魅力的なアクション満載のレースを演出した。
一方で、初日には排水溝の蓋がマシンに直撃するトラブルが発生。FP2の開始が遅れ、観客がスタントから追い出される事態となった。
また昨年はイベント開催までの9ヵ月間、主要幹線道路が封鎖されるなど地元住民への影響は大きく、一部の企業が収入悪化を理由にF1と市を提訴している。
主催者は今回、よりスムーズなレース運営を期待している。ハイエンドな顧客や企業向けのイベントでしかないとの批判が広まったことを受けて、 今年は一般入場券を1万枚追加し、低価格で販売することにした。
ラスベガス市とF1は今、ラスベガスGPが一発屋ではないことを証明し、”セカンドアルバム”でそのポテンシャルをフルに発揮できることを熱望している。