2024年の日本代表のラストゲームとなる北中米ワールドカップ・アジア最終予選の中国戦が、19日の20時(日本時間21時)から厦門白鷺スタジアムで行なわれる。
9月からスタートした最終予選も前半戦が終了。日本は4勝1分で勝点13を稼ぎ、首位を独走している。とはいえ、ここからの後半戦は2巡目ということで、対戦相手も日本の特徴を熟知したうえで挑んでくる。中国も9月には0-7の大敗を喫したが、直近2連勝と復調傾向にある。
「前回の結果は一度忘れて、また0-0から試合が始まるという気持ちで挑んでいかないといけない」と森保一監督は強調。15日の敵地インドネシア戦から移動を伴う中3日の強硬日程を承知のうえで、今回も現時点の最強メンバーを送り込む構えだ。
そのなかで3-4-2-1の1トップでは小川航基(NEC)の先発が濃厚。「気温が下がったのが1つ大きなところ。良いコンディションで臨める」と本人も自信を見せていた。とはいえ、やはり前回も79分間出場している彼が2戦続けてフル稼働するのは難しい。試合展開にもよるが、後半の早い時間帯に下がる可能性が高そうだ。
そこで、チャンスが与えられそうなのが、1年ぶりに代表招集された古橋亨梧(セルティック)。中国は4バックがベースで、5バックでベタ引きの守備をしてきたオーストラリアやインドネシアに比べるとスペースがある。
しかも後半になれば、疲労が蓄積して全体が間延びし、ゴール前の守備に綻びが生じやすくなる。そういう時こそ、“裏抜け名人”の古橋が異彩を放つのだ。
「2シャドーやウイングバックに良い選手がいるので、そこでちょっとした駆け引きで相手を剥がせる。仲間を信じて駆け引きを繰り返すことだと思います」と本人も語っている。
古橋の動き出しの速さ、ゴール前の嗅覚の鋭さはお膳立てする側も熟知しているはず。その筆頭が伊東純也(スタッド・ドゥ・ランス)。今回の最終予選ではジョーカーと位置づけられている伊東は、右ウイングバックか右シャドーで途中から出場しそうだ。中国戦では古橋と共闘する可能性が高い。彼ら2人の関係性でゴールを生み出せれば理想的。そのイメージはできあがっている様子だ。
「純也君は縦に行ってセンタリングを上げたり、中に切り込んでシュートもできる選手。センタリングからのシュートは今も練習していますけど、僕は上背があるわけではないので、単に待ってヘディングというのではなく、相手の前に入る、相手の背中に隠れてから動き出すことをより意識していきたいですね」と古橋は静かに言う。
伊東が縦に抜けて速いクロスを入れた時、どれだけ巧みにDFを置き去りにできるか。それが小柄なストライカーにとっての生命線になるのだ。
記事:【日本代表の中国戦スタメン予想】インドネシア戦から中3日も入れ替えは最小限か。“ベストメンバー”で2024年最終戦へ
もちろん伊東との関係だけではない。左ウイングバックも中村敬斗(スタッド・ドゥ・ランス)や前田大然(セルティック)が出るかもしれないし、シャドーにしても旗手怜央(セルティック)や久保建英(レアル・ソシエダ)らが陣取っていると想定される。
彼らからクロスやラストパスが中央に入ってきた時、古橋は高さでは分が悪いため、周囲と連係・連動しながらDFのギャップを突いていく工夫が必要になってくる。
そういったコンビネーションをよりスムーズに発揮してもらうために、森保監督には古橋、前田、旗手のセルティックトリオを同時出場させてほしい。そうすれば、3人は日常的にやっていることをそのまま代表戦のピッチに持ち込める。
ドイツ代表がバイエルン中心、スペイン代表がバルセロナ中心というように、世界の代表チームを見ても、同じチームのユニットを有効活用する例は少なくない。活動時間が短い代表チームはそれが効率的な強化方法だ。伊東・中村コンビを含め、今回は計算できるユニットをうまく使うべきだろう。
いずれにせよ、古橋が代表で生き残ろうと思うなら、まずはFWのジョーカー枠を勝ち取ること。「上田綺世(フェイエノールト)と小川とは全く違うタイプが1人はいた方がいい」と指揮官に印象付けるような変化をゴール前でもたらすことが肝要だ。
そのうえで得点・アシストといった数字を残し、「いつどんな状況でも点を取れる選手」だと実証できれば、2025年以降の継続招集の道も開けてくる。
来年1月には30歳になる古橋が、2026年W杯参戦へのチャンスを拡大するためには、この中国戦を大事にしなければいけない。守備面や起点になる動きを含め、多彩な役割を遂行し、1年間の大きな進化を見せつけなければならない。背番号9の登場のタイミングを心待ちにしたいものである。
取材・文●元川悦子(フリーライター)
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